1型糖尿病の発症原因、1つは「ウイルス感染」だった

膵臓のβ細胞が破壊されて発症する1型糖尿病。その原因の1つに「エンテロウイルス」の感染が関与しているようだと分かった。米国マサチューセッツ大学の研究グループが、糖尿病の専門誌ダイアベーツ誌の2015年4月号で報告した。

1型糖尿病でβ細胞はなぜ死ぬのか?

 

食事などで血糖値が上がると、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が分泌される。この制御がうまく働かなくなって血糖値が高い状態になるのが糖尿病だ。糖尿病のうち「1型糖尿病」は、β細胞が壊れてしまい、発症する。

その主な原因は、普段外敵を攻撃して体を守ってくれている仕組み「免疫」が、何らかの原因でβ細胞を攻撃するようになり、破壊してしまうためと言われている。1型糖尿病の発症には、「遺伝」と「環境」の両方が関わっていると知られている。発症の引き金となる環境要因として疑われているものの1つに、主に腸で増える「エンテロウイルス」の感染がある。

しかしまだ証明はされていない。今回研究グループは、人間の組織に拒絶反応を起こさないネズミにヒトのランゲルハンス島を移植したモデルを使い、エンテロウイルス感染が1型糖尿病の発症に関係するかを調べた。

エンテロウイルスは、人間のランゲルハンス島の細胞にも感染する「コクサッキーウイルスB群(CVB)」という種類のものを用いた。

β細胞はウイルスに感染して死んだ

続く・・・

まず、ネズミの膵臓のβ細胞を取り除いた。するとネズミは高血糖症になった。この状態で人間のβ細胞を含むランゲルハンス島を移植してやると、ネズミの血糖値は正常に戻った。そこにCVBを感染させて、血糖値の変化を観察した。結果、CVBに感染したマウスの47%が高血糖症になった。

さらに、感染したマウスから、移植していたランゲルハンス島を再び取り出して解析を行った。すると、ウイルスの構成成分であるタンパク質やRNAが検出され、確かにここにCVBが感染していたと分かった。

また、移植だけしてCVBを感染させなかったマウスから再び取り出したランゲルハンス島に比べ、感染させた方ではインスリンの分泌量が減っていた。さらに、遺伝子の働きを解析したところ、感染によりランゲルハンス島でいろいろな炎症関連物質(インターフェロン)が出ると分かった。

今回の実験により、1型糖尿病でインスリンを出すβ細胞が破壊される原因の1つとして、β細胞にエンテロウイルスが感染し、免疫細胞がそれを排除しようとした結果、β細胞を破壊してしまった、という流れも見えてきた。発症原因の一部がまた少し明らかになったと言えるだろう。

文献情報

Gallagher GR et al. Viral infection of engrafted human islets leads to diabetes. Diabetes. 2015; 64: 1358-69.

Diabetes. 2015 Apr;64(4):1358-69. doi: 10.2337/db14-1020. Epub 2014 Nov 12. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t

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