結核にかかってしまったので、結核について調べてみた

2009/04/05

結核にかかってしまったので、結核について調べてみたCommentsAdd Star

先日、健康診断で肺のレントゲンにカゲがあると言われて検査を受けるように言われました。健診結果はレントゲンを除きすべて正常値で、血液検査の結果も問題なく、まったくの健康体だったので、どうってことないだろうと高をくくっていたのです。しかし、病院での検査結果が出たら、なんと結核陽性でした…。

結核は非常に進行がゆっくりしていて、このように何の自覚症状もなく、血液検査にも異常がなくても、発症しているケースがあるらしいです。何らかの病気にかかっていれば、てっきり白血球の値等が増えていたりするものだと思っていました…。

以下、私は医学を勉強したものではないので、あくまで参考程度のものですが、調べたこと、わかったことを書いてみました。(誤り等がありましたら、訂正いただけると助かります。)

結核に感染しても発症するのは 1割程度

結核は、感染 = 発症というわけではなく、結核菌に感染しても、実際に発症する人は 1割程度という話です1。何年も発症していなくても、免疫力が弱ったときに発症することがあるそうです。年寄りの結核はそういう例が多いみたいですね。

1950年代は20代ですでに国民の約半数が感染という記述がありましたが2、その世代は今 70〜80歳というところでしょうから、若い頃に感染していたのかもしれません。

感染してても発病しないというのは、帯状疱疹とかと似たような感じなんでしょうか。帯状疱疹のウイルスは、水ぼうそうのウイルスなんですけど、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染しているからと言って、帯状疱疹が発症する人は非常に限られているみたいな。ある病気のキャリアで発症はしていない、というのは他の病気でも聞きますね。

私の場合、実は毎年、健康診断の胸部 X線で引っかかっていて、去年の検診結果には「軽度気腫性変化の疑い」と書いてありました。例年のことなので気にしていなかったのですが、今年は「浸潤陰影3」となっていて、病院での精密検査を勧められたわけです。それまで眠っていたものが、この 1年で動き始めた感があるので、このところ抵抗力が落ちていたんでしょうね…。

なお、2007年度の日本国内の新規の結核患者数は、25,311人でした。内訳は高齢者が多く、70歳以上の占める割合が、47.9% にのぼります。50歳以上になると、74.5% です4

結核の感染経路

結核は隔離対象の法定伝染病5なのですが、結核病棟に入院が義務づけられているのは「排菌」のある(塗抹陽性6)患者で、進行していて周りに菌をばらまいているような状態にある場合ということです。

私の場合、排菌はしていないとのことで、普通に仕事してて構わないそうなんですが、一応マスクはしておきましょう、みたいな話でした。薬による治療を始めて 1ヶ月半も経てば心配はほぼなくなるので、その頃にはマスクしなくても問題ないと医師は言っていました。

感染経路は飛沫核感染7で、いわゆる空気感染と呼ばれることもありますが、これは排菌がある状態ということなんでしょう。以下を見る限りでは、接触感染や経口感染の可能性は限りなく少ない印象を受けます。

「ゴホン!」と咳をすると、目に見えないしぶきが大量に放出されます。このなかに結核菌が含まれていると、近くの人がそれを吸い込んで感染を起こします(飛沫核感染)。

このように結核は100%、気道からの吸入感染ですので患者の使った食器や衣類などから感染する危険性はありません。また、結核になっていても、治療で結核菌が減っていたり、痰に菌が出ていない状態であれば、他の人にうつす恐れはないので、結核患者だからといって避ける必要はありません。

結核菌は、人が「咳」をすることで空気中に撒き散らされ、空中でふわふわ浮いているのを他の人が吸い込むことによって感染します ( 空気感染 ( くうきかんせん ) 、 飛沫核感染 ( ひまつかくかんせん ) )。手を握る、同じ食器を使う、などで感染することはありません。

●結核の感染はほぼ100%が吸入感染によるものです。

●吸入感染には飛沫感染と、塵埃感染が含まれます。

島根県浜田市の結核菌感染防止対策という資料には、消化管感染は現在ではきわめて稀である。結膜、鼻粘膜、扁桃などの粘膜や外傷を受けた皮膚を通じて侵入する結核菌感染は稀と書かれていましたので、やはり経口感染・接触感染については、心配するほど可能性は高くないということなんでしょう。

なお、結核の感染力ははしかの500分の1というほど弱いという記述8をみつけましたが、はしかは感染力が非常に高いという話なので、比較対象として妥当じゃない気もします。

結核の自覚症状がある場合は、検査を受けましょう

肺結核の症状としては、

  • 継続する咳
  • 痰 (血液の筋が混ざるときは特に要注意)
  • 大量の寝汗
  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 37℃前後の微熱が長期間にわたって続く

などがあるようですが、病気の進行が非常にゆっくりなために、今回の私のように自覚症状ないことも多々あるようなので、健康診断は受けておいてよかったです

逆に言うとこれらの症状が出ている場合は、結構進んでいるかもしれませんので、病院で検査を受けた方がいいのではないでしょうか。

そんなわけで、ちょっとでも心当たりのある方は、念のため検査を受けみてはどうでしょうか。万一のことがあるかもしれませんので…。まずは胸のレントゲンになると思いますが、胸の CT まで取ればかなりはっきりするようです。日本では BCG が行われているので、ツベルクリン反応での判別は利用されていないようです。代わりに血液検査でクォンティフェロン TB-2G 検査 (QFT 検査) が行われるようです。最終的には、痰や胃液から結核菌が検出されて「陽性」と認定されるようです。私は胃液を取るために数回鼻から管を通されて涙が出ました。結核菌は非常にゆっくりしか培養できないために昔は検査が大変だったみたいですが、今は培養しなくてもとりあえず遺伝子でわかるそうです。

結核の入院機関は指定されているので、結構進んでいるかも、という自覚がある人は、最初から結核病棟のある病院を受診した方がいいかもしれませんね。厚生労働省のサイトに医療機関のリストがあります。

万一、結核と判明した場合ですが、医療機関から保健所へ連絡が直接行くので、後は保健所が判断して、家族や会社を含む周囲の人への検査の必要の有無を判断してくれるそうです。

「周囲の人が結核と診断されて、自分も感染しているのではないかと心配です。」というようなご相談がよくあります。結核と診断された患者さんの症状によっては周囲に感染する可能性がある場合もありますが、ほとんど感染する可能性がない場合もあります。周囲に感染させた可能性がある場合、患者さんの住所を管轄する保健所がその患者さんのたんに含まれている結核菌の量、周りの人の年齢、接触状況によって周囲の人の検診について計画します。そして、全国の保健所同士が連絡を取り合い検診の必要な方の検診を実施します。

ただ、結核菌は非常にゆっくり成長します。感染の有無を確認するために、患者さんが「結核」と診断されてからされてから1ヶ月から2ヶ月経過してから検診を実施する場合が多くなっています。

なお、結核には医療費の公的負担があり、通常健康保険で 3割負担のところが、5% の負担で済みます。

その他、結核関連の参考になるページを以下にリストしておきます。

結核は本当に完治するまで薬を飲み続けることが大事

betelgeuse さんに以下のご指摘を受けてしまいました。

結核治療で肝心な「勝手な判断で服薬を止めたり不定期に服薬してはいけない」というところが無い記事

この記事は主に周囲の人向けに書いたもので、また薬のことについては医師から必ず説明があるので特に触れなかったのですが、結核でも耐性菌が問題になっており (多剤耐性結核が恐れられています)、薬を不規則に飲んだり、自分の判断で中止することは、治らないばかりが耐性菌を生み出すことになるので、毎日休まず薬を続けることが大切です。私も最低 6ヶ月毎日薬を飲むことを言い渡されました。肝臓に負担がかかるので、その間お酒は禁止です。薬は毎食後でなくて、1日 1回で済むのは助かりますが。


  1. 結核菌感染者のうち実際に発症するのは、メルクマニュアルによると 5〜10%、大塚製薬によると 15% となっています。メルクマニュアルはアメリカの医学書なので、日本では 15% のほうが妥当かもしれません。 
  2. 財団法人結核予防会複十字病院の尾形英雄副院長の発言 (結核【2】集団感染&高齢者増加 – スポニチ Sponichi Annex 大阪より) 
  3. 浸潤陰影は肺炎等でよく見られるようです。(胸部X線異常陰影 – Kitasato Univ. Electronic Textbook より) 
  4. 厚生労働省:平成19年度結核登録者情報調査年報集計結果(概況)(集計結果) 
  5. 実は法定伝染病という言い方はもうしないそうです。この使い方での法定伝染病は、伝染病予防法で定められた疾病だったそうですが、新しい感染症法ができたことにより、法定伝染病と呼ばなくなったとのこと。 
  6. 塗抹陽性については、「再認識される結核 健康チェック – 福山市医師会」に説明あり。 
  7. 結核の飛沫核感染については、岡山県立大学保健福祉学部山本研究室の結核菌の記述によると、飛沫核感染: 排菌者の咳やくしゃみで、飛沫が水分が蒸発し、5ミクロン大の菌の”飛沫核”となり浮遊し、物に付着した結核菌はやがて死滅しますが、これを肺末梢に吸い込むと感染をおこしますと書かれています。スポニチアネックスの結核の記事では、結核菌は表面が脂肪でおおわれているので、唾液(だえき)やくしゃみの水分ははじかれて、菌だけが空気中に浮遊していくとありました。同様の記述は、健康の森/結核にもあり。 
  8. 結核【4】乳児の感染には注意を – スポニチ Sponichi Annex 大阪 

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