糖尿病で壊疽(えそ)に至る場合も。糖尿病足病変を防ぐために気をつけたいこと

日本フットケア学会の2013年2月の発表によると、糖尿病患者の急増や高齢化社会にともない、足病変が増加しています。
糖尿病患者さんのうち0.7%が壊疽(えそ)を発症していて、重症になると下肢の切断につながり、命にかかわることもあります。

ここでは、糖尿病と壊疽の関係について、また、予防法についてご紹介します。

壊疽(えそ)の症状とは

事故や病気などの要因によって身体の一部への血流が遮断されると、その部位を組織している細胞が死滅し、「壊死(えし)」を起こします。その壊死部分が腐敗した状態を「壊疽(えそ)」といいます。
壊疽は症状の進行が早く、早期の治療が必要です。
壊疽が悪化した場合、切断を余儀なくされる場合もあり、最悪、敗血症によって命を落とす危険性もあります。
厚生労働省の「平成19年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病から壊疽を起こす人は糖尿病総患者の0.7%と、頻度はそう高くはありません。
糖尿病が要因となって発症する「糖尿病足病変」は、長期間に渡って血糖の高い状態が続いた結果生じます。
適切な治療を行い、血糖コントロールが出来ていれば、「壊疽」を起こす可能性は低くなりますので、予防法をしっかりと把握して、日々のケアを行いましょう。

糖尿病から壊疽に至る3つの要因

そもそも、なぜ糖尿病足病変は起こるのでしょうか。糖尿病足病変は、高血糖の状態が長期間続くことによって生じる、様々な合併症が重なって生じます。
壊疽の原因となる3つの合併症について詳しく説明しましょう。
①抹消神経障害
壊疽を発症する要因の1つは、足や手などの「末梢神経障害」です。
神経に栄養を供給する細い血管の血行が高血糖によって悪くなり、神経が部分的に死滅して「足のしびれ」「足がつる」「こむら返り」などの症状が出ます。手にも同じ様な症状が現れるケースもありますが、通常は足に比べて軽度です。
症状は、突然起こるものではなく、徐々に進行して感覚が麻痺します。そのため、症状を感じることができなくなり、改善したのか進行しているのか、見分けが付きにくいという特徴があります。
症状が悪化すると感覚が麻痺し、足に「靴ずれ」や「たこ」、「イボ」などができていることに気づかずに手当てが遅れてしまい、壊疽を起こす原因となります。
②動脈硬化による血行障害
動脈硬化によって血行障害となり、壊死を起こしやすいことも要因となります。
動脈硬化になると、手や足の血管が狭くなって血管が詰まるため、血液の流れが悪くなります。これにより手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなるため、「冷え」や「しびれ」「傷が化膿しやすい」といった症状が現れます。
更に悪化すると、大きな血管が慢性的に閉塞してしまう閉塞性動脈硬化症を発症し、主に下半身の脚の部分の血流が遮断されて足の先端から細胞が壊死し、感染による壊疽を起こす危険性もあります。
糖尿病の場合は、高血糖のため動脈硬化の進行が速く、症状が重症化しやすいのが特徴です。
➂免疫力の低下
糖尿病では健常者よりも感染症にかかりやすく、悪化しやすい傾向にあります。これは、血糖が高いために、ウィルスや菌を食い殺す白血球内の好中球の機能が十分に働かず、一度感染した病原体の抗体を作り出す「免疫機能」が低下してしまうためです。そのため、小さな傷でも治りにくかったり、感染を起こしやすく、悪化しやすかったりするのです。
これらの合併症が重なることで、壊疽を起こしやすくなります。
壊疽が起こるのは、ほとんどが足先です。足先は神経の司令をだす脳や、血液を循環させている心臓から最も遠くにあるため、神経障害や血行障害が起こりやすいのがその理由の1つです。また、足の裏など、見つけにくいところの小さな傷やイボ、たこの痛みに気づかず、抵抗力も低下しているために傷が悪化しやすい、ということも理由として挙げられます。

日頃のフットケアで壊疽の予防を

壊疽の一番の予防策は、正しい治療により血糖をコントロールすることです。血糖を抑えることで、壊疽の原因となる合併症を防ぐ事が肝心です。
また、糖尿病による壊疽は足先に出やすいので、日々のフットケアも「壊疽」予防に有効です。フットケアの基本は、せっけんなどの洗浄剤で足をきれいに洗うこと、乾燥しひび割れを起こさないように保湿剤を使用する、足に傷やたこイボなどの皮膚症状がないかチェックすることが有効です。また、足のケガには十分に気をつけましょう。靴ずれや巻爪、深爪も同様です。傷に気づいたら、小さな傷でもかかりつけの病院へ受診し、適切な治療を受ける事をおすすめします。

コメントを残すにはログインしてください。