ガンは強いストレス状態で発生するが、新しい免疫学で退治できる

 

by 新潟大学大学院医学部教授 安保 徹

ガン患者のほとんどは強いストレスを自覚

「福田ー安保理論」に沿って見ていくと、現在、死亡原因の30%を占めているガンも、本来は決して不治の病ではないことが理解できます。
自律神経のバランスを整え、免疫力を高めていけば、ガンとの共存はもちろん、自然退縮も望めるのです。

ところで、これまでの医学では、ガンは食品添加物、紫外線、タバコ、排気ガスなどの外的要因によって遺伝子が傷つき、発生すると考えられてきました。
しかし、この外的要因説には、疑問を抱かざるを得ない部分が大いにあります。

たとえば厚生労働省によると、肺ガンはタバコを吸っている人が、吸わない人より10~20倍かかりやすいといわれます。
肺がん患者の9割以上が、喫煙している計算です。

一方、社会的には禁煙傾向が続いているのに、肺ガン患者は増加しています。
現在は男性のガンの1位、女性のガンの3位を肺ガンが占めますが、ことに女性の場合、ガン年齢者の喫煙率は10%以下でしょうから、実際には、「タバコを吸わない人に肺ガンが増えている」としか考えられないわけです。

「福田ー安保理論」は、こうした矛盾に対しても、正しい答えを導き出してくれました。
すなわち、ほかの多くの病気と同様、ガンも心身のストレスという内的要因で発症してくる病気だったのです。

実際、ガンの患者さんにストレスの有無を聞くと、「働きすぎの生活を続けていた」「ひどくつらい思いをした」「痛み止めを飲み続けてきた」など、10人中8~9人は強いストレス状態にあったと答えます。
外的要因による発ガンは、せいぜい3割程度でしょう。

では、働きすぎ、心の悩み、薬の長期使用が発ガンを促すしくみを、簡単に説明しましょう。

私たちの体内では、毎日ガン細胞が生まれています。
しかし、免疫力が十分にあれば、リンパ球がその芽をこまめにつみ取ってくれるので、増殖はしません。
この絶妙なバランスを乱し、ガンを呼び込む体調を作っていくのが、働きすぎ、心の悩み、薬の長期服用などのストレスです。

心身のストレスは交感神経を緊張させて、白血球中に顆粒球を増やし、リンパ球を減らします。

過剰に増えた顆粒球は、活性酸素を放出して組織を破壊します。
破壊された組織には、その後、細胞の分裂・増殖が起こって修復されます。
しかし、交感神経の緊張状態が続いて修復がひっきりなしに繰り返されると、細胞核内で細胞増殖を調整している原型ガン遺伝子が異常をきたし、細胞を無限に増殖させるガン遺伝子に変化します。

その際、リンパ球が十分に働くことができれば、ガン化した細胞を攻撃してくれますが、交換神経が緊張しているとリンパ球が足りず、力も弱っているため、発ガンを許さざるおえないわけです。

ちなみに、リンパ球にはキラーT細胞、NKT細胞、古いB細胞、NK細胞の4種類のガンを攻撃する細胞があります。
このうちNK細胞はパーフォリン、NKT細胞はファス分子と呼ばれる物質を放出してガン細胞を破壊しますが、パーフォリン、ファス分子ともに、副交感神が優位でないと分泌できません。

こうして発ガンのしくみがわかると、ガンはどう治していけばよいかという道すじも見えてきます。

 

ガンを治すための4カ条

1.生活パターンを見直す
働きすぎ、心の悩みなどのストレスをへらし、体調がよくなるまでしっかりと休養をとる。
また、鎮痛剤を使っている人は中止する。

2.ガンの恐怖から逃れる
ガンは怖い、治らないとおびえると、交感神経の緊張を招き、治癒が滞る。
免疫力が高まれば進行は止まり、治癒できると信じ、気楽に付き合うこと。
また、転移は治る前兆なので、起こってもあわてない。

3.消耗する3大治療(手術、抗がん剤、放射線治療)は受けない、続けない
抗がん剤や放射線治療は白血球を減少させ、ガンと闘う力を奪うので、すすめられても断り、現在継続中の人は中止する。
どうしても手術が必要な場合は、最低限の範囲で受ける。

4.副交感神経を優位にして免疫力を高める

第5 回 食い気(食欲と飢え)

動物が,生きていくためのエネルギーを得るためには,食物を摂る,すなわ
ち本能行動の一つである摂食行動1) が必須である.これまでも述べてきたよう
に,その摂食行動を動機づけている本能的な要因が,食欲(appetite)である,
とされている.私たちにとって,「お腹が空いた.何か食べたい.」という気持
ちは,日常的に経験しているものであり,それもあって,宗教的にはしっかり
コントロールすべき欲であると見なされてもきた2).
日常的な「食欲」に対して,食物が欠乏しているために食べたくても食べら
れず,強い空腹を感じるものに「飢え(hunger)」がある.食物が見つからず
飢えが続くと,飢餓状態(starvation)になり,動物は衰弱して死に至る3).
これら3 つ,すなわち食欲,飢え,飢餓は,連続的な事象である.オックスフ
ォード動物行動学事典(マクファーランド, 1993)には,「飢えは食物を断た
れた結果,ふつうにおこるものである.…〈中略〉…飢えとは食物をとること
への欲求であり,その裏には生理的な要求がある.食欲というのは飢えの前兆
であり,飢えと同じような性質をもつ.飢えと食欲の境界は,はっきりしたも
のではないが,区別することはできるし,そのことが摂食行動を理解するうえ
で重要となる.」と書かれている.
同書は,さらに,食欲と飢え,いずれもヒトの経験をもとにした概念である
が,「飢えは食物を摂取していない結果生じる生理学的変化であり,動物によ
って認知されることがらである.食欲とは,食物のもつ刺激により生じる生理
学的変化であり,かつ認知される現象である.」と定義し,「食欲は栄養的に適
当な食物を選んだり,エネルギーのバランスを正常に制御する際に基本的な働
きをしている.しかし,食欲の機能と出発点は,よく理解されているとはいえ
ない.」としている.身近な例であるが,十分に食事をした後に濃厚なデザー
トが出てくると,ほとんどの人はそれに手を出すので,よく「ケーキは別腹」
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と言われる.胃袋が食物で一杯になっているのに,ケーキを見て食欲が高まる
というこの現象4) について,今のところ,十分に納得できる科学的な説明はな
いのである.とは言っても,摂食を制御するメカニズムについての研究は,こ
こ20 年ほどで大きく進んでいるので,その一端を垣間見ることにしよう.
満腹感をもたらすもの
前々回,刺胞動物のヒドラで,飽食により摂食の抑制が起こることを紹介し
たが,多くの動物は,自由に食べられるようにしておくと,自然に食べるのを
やめる5).これが満腹状態で,空腹から満腹に近づくにつれて,摂食の速度が
低下していく.この時,ヒドラでは,餌がもつ化学物質グルタチオンへの感度
が低下するし,クロキンバエでは味覚受容器の感度が順応している.下等な脊
椎動物には満腹感がないと思われていた時代の筆者のヒキガエルを用いた実験
でも,飽食したと思われる個体は,目の前にいる餌のコオロギに見向きもしな
かった.
私たち人間の場合,飢えや満腹感は,胃のあたりにある主観的な感覚である.
そのため,かつては,胃が空になると飢えを,また,それが食物で満たされる
と満腹を感じると思われていたし,被験者に風船を飲ませた実験から,風船の
収縮すなわち胃の筋肉の収縮が飢餓感をもたらす,と考えられてもいた.しか
し,飢えや満腹感を認知するメカニズムは,カロリーホメオスタシス6) という
視点でとらえるべきもので,それほど単純ではないことが明らかにされつつあ
る(Woods and Stricker, 2013).
Woods and Stricker (2013) によれば,飢えは,食事によって生じた満腹感
を抑制することによって起きてくる感覚だという.満腹感に関わるものには,
食物自身がもつ味や匂い・歯ごたえ・舌ざわり,胃の拡張状態,小腸における
食物の消化産物,胃・腸・膵管系ホルモン(比較内分泌学会, 1987 and 2007
参照)などがある.
消化管の役割: 胃壁の筋肉には多くの伸展受容器(筋肉の伸びの状態を検出
する受容器)があり,食物によって胃の体積が増えると,それに比例した電気
信号を生ずる.迷走神経を通って,延髄の弧束核や最後野に伝えられたその信
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号は,さらに視床下部や大脳皮質に達している.それに加えて,食事中に,
十二指腸から血中に放出された腸管ペプチド7) のコレシストキニン(CCK)が,
胃の幽門部に分布する迷走神経のCCK 受容体に作用し,胃の拡張状態につい
ての増大された信号が脳幹に伝えられ,摂食が抑制される.
十二指腸も,摂食行動の制御に関わっているという(Woods and Stricker,
2010).食事中に胃で消化された食物は,小腸に送られてさらに消化,吸収さ
れる.十二指腸の消化物である栄養分が,胃には関わりなく,摂食を抑制する
というのである.小腸の壁には,通常の小腸の細胞の他に,味受容体をもつ一
方,血中にペプチドを分泌している腸管の内分泌細胞がある.そのうちのある
細胞は,腸管内の特定の栄養分,例えば脂肪酸を検出すると,CCK を血中に
放出し,胆汁の分泌を促進する.また,別の細胞は,炭水化物を検出してグル
カゴン様ペプチドを放出し,インスリンの分泌を高める.こうして腸管の内分
泌細胞から血中に放出されたさまざまなペプチドは,満腹感を高め,摂食の抑
制に関わるという.
なお,胃と視床下部で産生されているグーレリンというペプチドは,多くの
脊椎動物で,摂食を促進している.胃から血中に分泌されたグーレリンは,視
床下部のNPY/AgRP ニューロン(後述)に作用するとされている(Korbonits
et al, 2004).
脳・視床下部: かつて,主にラットを用いた,脳内の特定部位を局所的に破
壊する実験から,視床下部の腹内側核は満腹中枢,外側視床下部は摂食中枢で
あるという,摂食行動の制御についての二元説が唱えられていた時期がある.
ブドウ糖に金を付けたような構造をもつゴールドチオグルコースという化合物
は,動物の体内に入っても分解されないばかりか,金が付いているので,それ
を取り込む細胞の位置を調べることができる.このゴールドチオグルコースを
ラットに投与すると,満腹中枢とされていた腹内側核に集積することから,こ
の部位が血中のグルコース濃度(血糖値)の変化を検出しているとも言われて
いた.
このような時期に,大村裕博士(当時九州大学医学部)は,電気生理学的な
研究によって,腹内側核にはグルコースによって電気活動が昂るグルコース受
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容ニューロンが,外側視床下部にはグルコースによって抑制されるグルコース
感受性ニューロンがあるということを発見した.それによって,血糖値が高い
と腹内側核のニューロンが,外側視床下部のニューロンの活動を抑えて,摂食
行動を抑制するという仮説が導かれた.しかし,大村博士ご自身が,この仮説
の改訂版を出されているように,脳による満腹感の認知および摂食行動の開始
のメカニズムは,二元説で説明できるほど単純ではなかった(Oomura, 1988).
視床下部の神経ペプチド: 「食い気」という本能(煩悩とも言える)を理解
するためには,摂食行動を制御しているメカニズムについて次のことを明らか
にすることが望まれる.すなわち,飢えという状態がどのようにして認知され
ているのか,飢えによってどう食欲が湧いてきて摂食行動が始められるのか,
そして,満腹とはどういう状態で,それによってどう摂食行動が終了するか,
図1 ラットの外側視床下部におけるオレキシンニューロンおよび弓状核におけるNPY/AgRP
ニューロンの位置とその入出力.説明は本文。ARC, 弓状核; VM, 腹内側核; HL, 外側視床下部.
回遊・渡り・帰巣 第10 回 動機づけ 図3 を改変.
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である.
実験的には,飢えという状態もしくは食欲によって動機づけられた視床下部
のペプチドニューロンが,摂食行動の引き金を引いている,と言ってもよいだ
ろう.その主役は,摂食を促進する働きをもつ外側視床下部のオレキシンニュ
ーロンと弓状核のNPY/AgRP ニューロンではないだろうか(図1).
オレキシンニューロンについては,回遊・渡り・帰巣 第10 回 動機づけで
詳しく述べているので,ここではその概略だけを記しておく.このニューロン
は,興奮すると,食物を口に入れる,咀嚼する,飲み込むといった一連の筋肉
の動きを制御している延髄の中枢プログラムを起動し,摂食行動を促進してい
ると考えられる.腹内側核の血糖値の変化を感知しているニューロンから信号
を受け取っている.一方,腹内側核の近くの弓状核には,血中のインスリン濃
度あるいはレプチンというタンパク質ホルモンを感知するニューロンがある.
それがNPY/AgRP ニューロンである.NPY は神経ペプチドY,AgRP はア
グーティ関連タンパク質の略で,この2 つが同一ニューロンに共存している.
いずれにも摂食行動を促進する作用があるが,インスリンあるいはレプチンは
このニューロンの活動を抑制している.この抑制が,エネルギーホメオスタシ
ス,とくに次回に取り上げる予定の「肥満の神経科学」にとって重要である.
今回,胃でも脳でも,ペプチドが満腹感,ひいては飢えの制御に重要である
ことが見えたが,それがどう摂食の制御に結び付くかは,今後の課題である.

1) 食物を探し,獲得し,処理し,消化することに関係するあらゆる活動が,摂食行動に含ま
れるという.また,一般に,それぞれの動物種の摂食は,取り入れたエネルギーと使用し
たエネルギーのバランス,すなわちエネルギーホメオスタシス,を維持するように実施さ
れているという(マクファーランド, 1993).
2) 仏教には,十戒の一つに,不非時食(ふひじじき)という戒がある.これは一日二回の食
事時以外は,物を食べてはいけないというものである.
3) 動物がどれだけ飢餓に耐えられるかは,種によって大きく異なる(McCue, 2010).鳥類
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は一般に飢餓に耐えられる日数が短いが,南極のペンギン類の中には3 ヵ月を越える長期
間の飢餓に耐えられるものがいる.ヒトの場合は,1 ヵ月程度の飢餓に耐えられるが,太
っているとその日数が大巾に延びる.ラットを用いた実験でも肥満した個体の方が,痩せ
た個体の数倍の期間も飢餓に耐えられる.魚類,両生類,爬虫類の多くは,飢餓に耐性が
あり,ウナギが何も食べず2 年以上も生きていたという例もある.
4) 食物を摂取すると血糖値が上昇する.それによって食欲が抑えられる,とされているが,
食事の直後の血糖値の上昇は,糖分に対する欲求を高めることが知られている.
5) 水中の微生物やプランクトンを濾過摂食している海綿動物や二枚貝,ホヤなどの原索動物
に,飽食という状態があるかどうかを調べた研究は見当たらない.
6) カロリーホメオスタシスの重要な役割の1 つは,十分な量のグルコース(=ブドウ糖)を
供給し,正常な脳の機能を維持することであるとされている.
7) 腸管ペプチドは,脳腸ペプチドとよばれることもある.脳が産生しているのと同じ,ある
いはよく似た多様なペプチドが,消化管からも血中に分泌されている.
8) ニューロンの中には,ニューロンが産生するペプチド,すなわち神経ペプチドを情報分子
としているものがある.そのようなニューロンをペプチドニューロンとよんでいるが,視
床下部には多様なペプチドニューロンが分布する(日本比較内分泌学会, 1987 & 2007)

現代日本人の宗教心について/スピリチュアリズムの台頭

現代日本人の宗教心について/スピリチュアリズムの台頭

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▪日本人の心の荒廃

バブル崩壊後の失われた20年から反転、アベノミクスによる経済浮揚効果、東京オリンピック開催に伴う景気浮揚期待もあって、多少なりとも好転の兆しが見えかかっていた日本経済も、消費税によるマイナス効果、欧州ショック、中国ショック等相次ぎ、一転また暗雲が漂ってきている。しかも、これから仮になんらかの神風が吹いて、好景気が訪れるようなことになったとしても、少子高齢化、貧富の格差の拡大、貧困層の拡大、人口減少による地方の衰退(2020年以降くらいからは首都圏でも人口は減少方向へ)、日本企業の競争力の弱体化等、深刻かつ構造的な問題は解決の道筋ひとつ見えてこない。

こんな中で、男女共生涯未婚比率も上がり、独居は拡大する一方だ。地域コミュニティも企業コミュニティも衰退の一途、伝統宗教の基盤も弱いとなれば、何を心の拠り所にすればいいのか。物的な困窮やインフラの劣化もさることながら、日本人の心の荒廃こそ何より心配だ。荒廃の結果として、自殺、暴走(暴力)、精神的な病(ひきこもり、うつ病等)等、ネガティブな想像ばかりが膨らんでしまう。排外主義が強くなったり、怪しいカリスマに煽動されやすくなったり、というようなことも心配になる。

こんな時こそ宗教の出番のはずなのだが、オウム事件のトラウマが強いこともあってか、日本人の宗教アレルギーはかつてないほど高いと言わざるをえず、話題にすること自体はばかられるような空気がある。そもそも日本の伝統的な宗教、特にマジョリティの仏教など、衰退しつつある『檀家システム』の維持管理が精一杯で、『衆生救済』に乗り出すような積極的な話はほとんど聞こえて来ない。結局この問題は袋小路に詰まってしまって、誰も出口が見出せないでいるのが現状と言える。

▪薄められたスピリチュアル

だが、本当に出口はないのだろうか。日本人は心の拠り所なく皆うずくまったまま呆然としているのだろうか。そういう方向に問いを向けると、この数年必ず出てくる、それこそ『定番』の回答には日本人の宗教心の発露としての『パワースポット』の興隆がある。 パワースポットというのは、地球に点在する大地の『不思議な力=科学では解明されていないが経験的に存在を信じる人が多い力』がみなぎっている場で、そこに行くと身分性別を問わず誰でもその力を得ることができるとされる。

『見えないもの』『科学では証明されていないもの』を扱っているという意味では、スピリチュアル(宗教的/心霊的/精神的)の範疇に入るものの、宗教の戒律のような締め付けもなく、特別な修行をせずともご利益がある、という意味では神社仏閣等へのお参りに近いと言えるのかもしれない。スピリチュアルではあるが、極めて薄められたスピリチュアルだ。ただ、昨今、パワースポットに行くための旅行が大流行する等、ブームであることは確かだろう。同列とも言える、スピリチュアル系『癒し』サービスも非常に流行っている。

ただ、この程度であれば、『ご利益があれば儲け物』というくらいの軽いノリの関わりとも考えられ、特に宗教心の高まりとか、人生や世界を考え直す哲学のようなものに繋がるとも思えない、という意見も出てきそうだ。心の拠り所になるかと言えば、なったとしてもさほどの拠り所ではなさそうだ。

▪輪廻転生を信じる日本人

では、もっと人の世界観をひっくり返すような、生き方を見直さずにはいられないような『スピリチュアル』との接点はないのか。その点について参考になる大変興味深い調査レポートがある。2008年に、国際比較調査グループ(ISSP: International Social Survey Programme ) が行った、『ISSP国際比較調査(宗教)』の結果に基づき、2009年5月にNHK放送文化研究所により出されたレポート、『宗教的なものにひかれる日本人』だ。全体に読みどころの多い好レポートだが、何より私の目がとまったのは、『目には見えないが、宗教上は存在すると考えられているもの』について回答者が『絶対にある』および『たぶんある』と回答した7つの項目の比率だ。

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“宗教的なもの”にひかれる日本人 | 世論調査 – 社会や政治に関する世論調査 | NHK放送文化研究所

大変驚いたことに、祖先の霊的な力:47%、死後の世界:44%、輪廻転生:42%等、4割超が『死後の世界』や『輪廻転生』というような、まさに人生観、世界観に大きく関わるような内容について、あると答えており、7つのうちどれもないと回答したのは、全体のわずか14%しかいない。『日本人は宗教に関心がなく、科学で証明されていないものは信じない』という意見を聞くことも少なくないが、このアンケート結果を見た限りでは、まったくの誤解と言うしかない。しかも、このトップスリーは、若年ほどあると答える人が多く、年齢が上がるほど比率は低い(宗教そのものの信仰は年齢が上がるほど多い)。16歳から39歳までの女性に限定すると、なんと70%前後が『死後の世界』も『輪廻転生』もあると答えている。

もちろん、この答えだけで信仰心や宗教哲学の浸透等をはかれはしないだろうが、それでも、人生が一回限りと考えるのと、死後の世界や輪廻転生があると考えるのとでは、生き方の根幹が変わってくる可能性は大きい。ただ、少なくとも素地は十分にあることは示唆していると言ってよさそうだ。

このレポートには、オウムのトラウマについても、すでに乗り越えられたと判断できるデータが載っている。『仏』を信じる人の比率を時系列にみると、1993年には44%だったのが、1995年のオウム事件の後の1998年では、39%へと減っている。レポートでは、これはオウム事件後の一種の主鏡アレルギーの可能性が強いと分析している。しかしながら、2008年には42%に回復している。宗教アレルギーも薄らいできていること見ていいのではないか、というわけだ。

 

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