(5)山里の味・手作りコンニャク 愛情たっぷり肉厚チキンサンド
山里ならではの味覚のひとつ手作りコンニャク。菊鹿のコンニャク作りの“元祖”と呼ばれる、おばちゃんがいると聞いて、訪ねてみることにしました。
霍川(つるかわ)ツヤコさん(78)。小さな作業場の、かまどにはまきがくべられ、ぐらぐらと沸騰する大きな釜の中には、丸いコンニャクがゆがかれています。
近くに立っているだけで、すぐさま汗が止めどなく噴き出してきます。
ここでは、凝固剤に竹灰を使う昔ながらのこんにゃくが作られており、そのこりこりとした食感が人気です。コンニャク作り歴50年のツヤコさんの技を学びに来るお弟子さんもたくさんいるそうです。
夫の溜(たまる)さん(80)が「サンショウみそも母ちゃんの手作りよ。コンニャクにつけて食べてみて」と、ごちそうしてくれました。
出来たてほやほやを、自家製のサンショウみそに絡めていただくそのおいしさといったら。身の締まったコンニャクと、サンショウの香りが効いた甘めの酢みその相性が抜群です。
他にも料理上手なツヤコさんが、作ったさまざまなコンニャク料理を用意してくれていました。
ツヤコさんのコンニャクは、地元の物産館「あぷりぃ」で購入することができます。
その「あぷりぃ」で、人気なのが、村上留美子さん(58)が作る「チキンカツサンド」です。びっくりするのは、そのボリューム。分厚い鶏のむね肉にとんかつソースとタルタルソースがしっかり絡み、キャベツとマヨネーズがたっぷり入っています。
「年配の方が“このカツサンドは軟らかいから食べやすか”と、買ってくださるのがうれしくて」と語る村上さん。
前日に肉をカットすると硬くなるため、手間はかかっても毎朝早起きして切り分け、じっくり揚げるのがおいしさの秘けつなのだそうです。「多くの方においしく食べてほしくて、愛情込めて手作りしています」という村上さん。
観音様に守られた町で出会ったあの笑顔、この笑顔。つかの間の楽しいひとときを過ごせば、少しだけ涼しくなった風に、秋の気配を感じたのでした。