http://www.shio-ya.com/general_salt/sengou.html より~
釜焚き(海)塩と天日(海)塩
「釜焚結晶」の海水塩と「天日結晶」の海水塩
「釜焚き塩」と「天日塩」。この2つの食塩は、「岩塩」や「湖塩」そして他の「海水塩」と比べると、とても似ています。それは、どちちらも原料は「海水」だけ。そして結晶の工程は「天日結晶」と「釜焚結晶」と違いはあれど、どちらも『海水の水分を飛ばして濃縮する』という点は同じだからです。ですから、もちろん「塩作りの原理」も共通してあてはまります。
「岩塩」「湖塩」「湖塩水」は、自然現象で「塩作りの原理」が行われて出来たものですが、この「釜焚き塩」と「天日塩」は、人間が「塩作りの原理」を使って作ったものです。ですから、その使い方次第でその成分・味を調整することが出来ます。「具体的な塩の違い」のページで、以下のように書きました。
「食塩の種類」や「原料」「製法」はその塩の「肩書き」や「履歴」であって、その成分・味を決めることではありません。
すべての塩は元々、皆海水です。そして「岩塩」「天日塩」など海水以外の原料は海水の「部分的なもの」。その意味で「海水」は「すべて」ですから、「海水」だけを原料にした場合、理論上は、『NaClが100%の塩を作ることも出来るし、海水から水分を飛ばしただけの成分の塩をつくることも出来る』のです。それは「天日」「釜焚き」というだけでないもっと詳細な「製法」、つまりその塩の作り手が「塩作りの原理」をどのように使うかによって決まります。
釜焚き(海)塩
- 原料:海水
- 工程:天日、平釜
原料の「海水」を「天日濃縮」した後、平釜で「釜焚濃縮」して塩を結晶させた食塩です。岩塩や塩湖がなく、気候的にも「天日結晶」が難しい日本で昔から行われてきた製法です。昔の「揚げ浜式」「入浜式」「流下式」と呼ばれる方法はすべて「天日濃縮」の方法です。どの方法でもある程度まで「天日濃縮」し、その後「釜焚結晶」(主に平釜)で塩を結晶させます。
またそれら昔の「天日濃縮」の方法では、平らな塩田が使われることが共通していますが、現在は主に立体塩田と呼ばれる設備が使われています。立体塩田では、高く張り巡らしたネットなどの上から、ポンプで上げられた海水を噴霧し(下に落ちるまでの滞空時間を設け)、それを継続して何度も繰り返しながら濃縮します。昔の平たい塩田は薄く広いことで水分の蒸発を促しますが、立体塩田では広さに高さが加わることで、より狭くても水分の蒸発を促せる仕組みになっています。
こうして出来上がった『濃い塩水』を平釜で一昼夜ほど加熱し「釜焚結晶」させます。燃料は、昔は薪、今はボイラーが多いでしょう。また、「釜焚結晶」と「天日結晶」の違いは、その温度と時間にもあります。詳しくお知りになりたい方は、以下のページをご覧ください。
天日(海)塩
- 原料:海水
- 工程:天日、(粉砕)
「海水」を「天日濃縮」して『濃い塩水』を作るところまでは「釜焚き塩」と同じですが、この「天日塩」は、その後の結晶の工程もさらに天日で濃縮する「天日結晶」で作られた食塩です。原料の「海水」が食塩になるまで、燃料を使った人工的な加熱が行われていません。また「天日結晶」は、昔から行われていますが、通常それが可能な気候や海に近い広く平らな場所などが必要です。また、日本で行うためには、温室のようなそれなりの設備が必要となります。
例えば、「再製加工塩」の原料である「天日塩」もこれにあたります。その「天日塩」は「天日濃縮」「天日結晶」の工程を経た後、「粉砕」「洗浄(塩を洗う)」されます。「洗浄」されることにより、夾雑物はもちろんニガリ成分(マグネシウム分など)も落とされ、よりナトリウム分(NaCl)の純度が高められています。
また、上記の「工程」の欄に(粉砕)というのがありますね。「釜焚き塩」にはありません。「再製加工塩」の原料である「天日塩」も「粉砕」されていますが、これは通常「天日結晶」された塩の粒は「釜焚結晶」された粒よりも大きくなるため、「粉砕」されることが多いからです。「天日結晶」は「釜焚結晶」に比べ低い温度で結晶します。低い温度は長い時間を要します。通常その時間が長ければ長いほど結晶の粒が大きくなります。例えばカンホアの塩だと、【結晶のまま】は「天日結晶」したままの粒で、【石臼挽き】が石臼での「粉砕」後の粒になります(写真あり)。粒の大きさだけでなく、「釜焚結晶」と「天日結晶」の違いを詳しくお知りになりたい方は、下記のページをご覧ください。
終わりに・・・・食塩の「肩書き」「履歴」以上のこと
これまでの説明で、食塩の「肩書き」と「履歴」の説明は終わりです。先述のとおり、「海水」だけが原料の「釜焚き塩」や「天日塩」の成分・味は、「塩作りの原理」をどのように使うかによって、様々なものになります。「なぜ、様々なものになるのか?」を知るには、「肩書き」や「履歴」からもう一歩踏み込まないとなりません。ご興味のある方は、下記のページをご覧ください。