https://www.min-iren.gr.jp/?p=29236 より~
アトルバスタチン(リピトール錠など)、ロスバスタチン(クレストール錠など)、ビタバスタチン(リバロ錠など)、プラバスタチン(メバロチン錠など)、シンバスタチン(リポバス錠など)、フィブラート(リピディル錠など)、エゼチミブ(ゼチーア錠など)
脂質異常症治療薬は、治療指標としてLDLコレステロール・トリグセライド(TG・中性脂肪)の異常値を引き下げる目的で使用されます。脂質異常症治療薬は、スタチン系・フィブラ-ト系・小腸コレステロールトランスポーター阻害薬などがあります。民医連新聞で掲載してきた脂質異常症治療薬の副作用をこの5年間のモニター報告を中心まとめてみました。
共通の副作用として、「横紋筋融解症と随伴症状」「脱毛」「薬剤性肝障害」があります。
なお、「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス」は、2014年3月に日本動脈硬化学会からだされていますので、管理指標の参考としてください。
http://www.j-athero.org/qanda/
なお、薬物療法を開始する前に、食事・運動・生活習慣の改善が基本中の基本です。
横紋筋融解症と随伴症状に注意
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル:横紋筋融解症」には下記の注意事項が記載されています。『骨格筋の細胞が融解、壊死することにより、筋肉の痛みや脱力などを生じる「横紋筋融解症」は、医薬品によって引き起こされる場合があります。主に高脂血症薬、抗生物質(ニューキノロン系)でみられることがあるので、何らかのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、放置せずに医師・薬剤師に連絡してください。」「手足・肩・腰・その他の筋肉が痛む、」「手足がしびれる」、「手足に力がはいらない」、「こわばる」、「全身がだるい」、「尿の色が赤褐色になる」などの症状に気づいた場合で、医薬品を服用している場合には、いったん中止して、すみやかに医師・薬剤師に相談してください。』
症状は、筋肉・関節の痛みやしびれ・脱力感・倦怠感など症状が個人によって様々です。そのため、副作用と気づかずに長期間放置されているケースもあります。(症例2.3.4.)
投与直後から1ヶ月が発現しやすいのが特徴ですが、高齢者では、QOLの低下につながるだけに日常の運動機能の確認も必要です。(症例1.)重篤事例では長期投与を経過して発現している場合もあります。(症例5.6.)脂質異常症治療薬の服薬時は、横紋筋融解症の初期症状を患者さんに伝え、3か月以内は、肝機能とCPKの毎月チェックをすすめるとともに、長期投薬例では、患者の訴えを確認しすみやかに服薬中止と検査を実施することが必要です。
また、アトルバスタチン・ロスバスタチン・ビタバスタチン・フィブラート・エゼチミブは肝機能障害時には禁忌、スタチン系とフィブラート系は中等度腎障害が禁忌であることにも留意が必要です。
(症例1)70歳代女性。階段歩行では膝の痛みがある。脂質代謝異常の診断でプラバスタチンNa錠5mg開始。翌日、下肢のしびれ、痛み、脱力が出現。階段をのぼるがつらくなる。投与2日目、手の指先の感覚がなくなる。3日目中止。中止半月後、手先の感覚麻痺は改善、下肢のしびれ、痛み、脱力は軽快しているが症状は残存。さらに1か月後、改善した。
(症例2)80歳代女性。プラバスタチン10mg開始23日後筋肉痛で中止。9/29シンバスタチン5mg投与開始。筋肉痛はなし。約2年後、LDLが改善したため、自己中止すると、両足の浮腫みが翌日に消失。服薬すぐに足の浮腫みがあったが下肢静脈瘤のせいだと思っていた。
(症例3)60歳代女性。以前プラバスタチンでコレステロール管理し改善したので中止。11/4再度コレステロール上昇したためエゼチミブ10mg開始。半月後、背中の痛み・指の痛みが生じた。整形外科など多数受診するが原因わからず、翌年3/23整形外科医からの勧めでゼチーア中止。中止5日後痛みなくなる。
(症例4)60歳代女性。以前ロスバスタチンで足がしびれる感じがあり中止。中性脂肪が高いためベザフィブラート徐放錠200mg開始。1週間後、肘と膝の筋肉痛がでたが、運動のためと思い継続。服用50日目で筋肉痛が続くため中止。中止後数日で劇的に改善した。
(症例5)60歳代女性。アトルバスタチン5mg開始。2年10か月後AST41・ALT56・CPK117。3年3か月後、午前1時起き上がれずはって歩いている。手足に震えむがあり力が入らない。しゃべることはできる。発熱なし。脳外科受診をすすめられ受診。異常なし。翌日、手足の震えかわりなし。起きて歩けない。内科と神経科受診。AST311・ALT117・LDH1988・CPK23295。輸液施行。眠剤とアムロジピン以外中止。中止後1週間。AST77・ALT83・LDH341・CPK832。アトルバスタチン以外投与再開。中止2週間後退院、AST54・ALT67・LDH309・CPK183。退院1月後、AST48・ALT45・LDH273・CPK64。
(症例6)40歳代女性。32ケ月前のSCr1.5であり軽度腎機能障害の可能性のある患者。25ケ月前に他院にてロスバスタチン2.5mg処方開始。中止日当日、意識レベル低下のため救急搬送。手足冷汗、40℃の発熱。呼びかけに答えず。四肢(上肢<下肢)硬直傾向。向精神薬内服なし。凝固系・血小板異常なし。高張性脱水の傾向。AST94・ALT46・LDH387・CPK1748・SCr3.37。中止後5日目、AST931・ALT303・LDH1961・CPK75878・SCr3.67。その後徐々に改善に向かう。32日目、AST13・ALT11・LDH267・CPK51・SCr2.50。
脱毛について
プラバスタチン2例、エゼチミブ3例・フィブラート1例の脱毛が報告されています。1症例は、エゼチミブとプラバスタチンいずれでも脱毛が報告されました。60台~70台の女性で、しかも日常生活上での容姿に関連する副作用であり、脂質異常症治療薬は全体として注意が必要です。
(症例1)70歳代女性。エゼチミブ10mg内服数日後から脱毛発現。1か月後中止。回復期間不明。プラバスタチン10mg内服3日後から脱毛発現、そのまま内服し42日後受診し中止。2か月程度で症状おさまる。
(症例2)70歳代後半女性。プラバスタチン10mg開始。2年後脱毛相談あり、アトルバスタチン5mgへ変更。2年後プラバスタチン5mgへ変更し、4年8か月後10mgに増量。2年8か月後、脱毛の訴えがあり、5mgへ減量。2か月後、自分で調整しており、服薬中止すると脱毛が少し改善するため、3日~5日ごとの服薬でコントロールしている。
(症例3)70歳代前半女性。エゼチミブ10mg服用後、5日ほどで洗髪時髪の毛が抜けた。14日間服薬後、中止し2~3日で改善した。
(症例4)60台女性。ロスバスタチンからベザフィブラート徐放錠へ変更。約半年後、びっくりとするほど毛が抜ける。3か月後中止。中止後4ヶ月で改善。
スタチン系に多い副作用