基礎体温の水準はどのくらい?

37℃って発熱なの? 正しい体温の測り方は?
意外と知られていない体温や体温計についての「?」にお答えします。

監修:三川 宏 (東京衛生病院麻酔科(元 杏林大学病院長)

37℃は発熱とは限りません。

子供の体温を測ってみたら37℃。

「どうしよう、保育園が預かってくれない」「予防接種が受けられない」「プールに入れない…」そう思ってしまうお母さんは、たくさんいらっしゃることでしょう。むかしの水銀体温計は、37℃のところが赤い字になっていたので、そんな間違った常識ができてしまったのでしょう。

37℃は発熱の時もあるし、発熱でない時もあります。 そして37℃は日本人の平均的な平熱の範囲なので、むしろ発熱でないことのほうが多いのです。

http://www.terumo-taion.jp/terumo/report/18.html

(参照元)

人の体温と各部位の測定時間

気温は暑くなったり、寒くなったり。体温は変わらないの?

思い浮かべてください。ヒトは暑くなれば手足や顔が赤くなったり、汗をかきます。 また寒くなれば手足が冷たくなったり、ふるえたりします。
私たちの体はこうして体温を一定の幅に保つようにいつもコントロールしているのです。

体温は体の中心に近づくほど、高くて安定しています。

体内の温度はどうなっているのでしょう?
図1を見てください。体内の温度は、手足や皮膚に近いところでは低く、体の中心部にいくほど高いことがわかります。手足や顔など、体の末端や表面の温度は、季節や環境温の影響を強く受けます。一方、体の中心部に近いところの温度は、脳や心臓など、大切な臓器の働きを保つために、高く安定しています。この安定した高い温度を「中核温(ちゅうかくおん)」といい、これを測れば、安定した指標としての『体温』が得られますが、体の内部の温度なので日常的には測れません。【POINT】体の中心部に近い温度は、高く安定

体内の仮想温度分布

体内の温度が反映される場所で測るのが一般的です。
そこで、体に負担をかけずに簡単に検温できる場所として、ワキ(腋窩)、口(舌下)、耳、直腸など体の表面に近い場所が用いられています。測定する部位ごとに検温に必要な時間や方法が異なり、得られる温度も異なります。平熱も部位により違うため、それぞれの部位の平熱を知る必要があります。

【POINT】平熱は測る部位で異なる

体温マメ知識

おなじ恒温動物でも体温はちがう
一定の体温を保っている恒温動物のなかでも、スズメなどの鳥類はネコなどの哺乳類よりも体温が高くなります。鳥類でも哺乳類でも、体が小さい方が体温は高くなる傾向があります。これは大きい動物の方がエネルギーの効率が良く、冷えにくいので、それほど体温が高くなくても一定の体温を維持できるためだと考えられています。ヒトは体の大きさの割には体温が低い方になります。

体温マメ知識

日本人の平熱と発熱

平熱っていったい何度なんでしょう?

いつ体温を測っても37℃近くあって、ときどき37℃を超えることも。
子どものころは、プールに入れてもらえないこともあったり‥
わたしの平熱は、おかしいのでしょうか?

日本人の平均体温は36.89℃。でも人によって、かなり幅があるんです。

日本人の7割くらいは、体温が36.6℃から37.2℃の間。
10歳から50歳前後の健康な男女3,000人以上の体温の平均値は、36.89℃±0.34℃(ワキ下検温)でした。この調査によると全体の約7割の人が36.6℃から37.2℃の間に入りました。「平熱」にも個人差があって当然なのです。医学的に正しい測り方をすれば、37℃はむしろ平均的な平熱の範囲内だということがわかっています。
【POINT】37℃はむしろ平熱

日本人の体温分布

平熱が低い人は、37℃程度でも発熱を疑う。
人によって平熱に大きな違いがあるのですから、発熱の基準も一概にはいえません。自分の平熱より明らかに高ければ発熱だということになるのです。ですから、普通は発熱に入らない37℃程度の体温でも、たとえば平熱が36.5℃と低い人の場合は発熱のはじまりの可能性がありますので、すこし様子をみたほうがいいかもしれません。なお、感染症法では37.5℃以上を「発熱」、38.0℃以上を「高熱」と分類しています。

【POINT】体温が明らかに平熱より高ければ発熱

体温リズム

高くなったり低くなったり、体温には1日のリズムがあります。だから平熱もひとつではありません。

人間の体温は、1日のうちでもリズムをもって変動しています。だから平熱は、ひとつではありません。時間帯ごとの平熱をおぼえておくと、健康管理に便利です。

病気でなくても、運動しなくても人の体温は上がったり下がったりします。

早朝は低く、夕方に高くなる体温。
体温は、熱が出る病気にかかっていなくても、運動、時間、気温、食事、睡眠、女性の生理周期、感情の変化などにより変動しています。また、ヒトには朝・昼・夜と、24時間単位の体温リズムがあります。これを「概日リズム」といいます。普通は1日のうちで早朝が最も低く、しだいに上がり、夕方が最も高くなります。1日の体温の差はほぼ1℃以内です。
【POINT】人には24時間単位の体温リズムがある

一日の体温リズム

時間帯ごとの平熱を測っておく意味。
発熱を判断するには、まず平熱を知らなければなりません。ところが、体温は1日のうちにも変動するので、1回だけ体温を測って、その値のみを平熱と考えるのは適切ではありません。
起床時、昼食前(午前10?12時頃)、夕方(午後4?6時頃)、就寝前の計4回体温を測り、時間帯ごとの平熱としておぼえておくと、発熱を正しく判断できます。この場合、食後すぐは体温が上がりますから、食前や食間に検温するのが適切です。また平熱の測定は1日だけでなく、日を置いて何回か測ってみましょう。高齢者の場合は気温が高いと高め、気温が低いと低めで体温が安定してしまうことがありますので、季節によるちがいも調べておくといいでしょう。

【POINT】時間帯ごとの平熱をおぼえておく

体温マメ知識

健康な生活リズムを作るのは「朝ごはん」
ちゃんと早起きして、午前中からしっかり体を動かし、夕方に運動をすれば、夜は自然に早く眠れて、翌朝も早起きできます。体温も早朝は低く、夕方に高くなるというリズムをしっかりと刻むので、健康な生活を送りやすくなります。

体温マメ知識

高齢者と体温

高齢になると体温は低くなりがち。かぜをひいたのに熱があまり高くならないことも。

若いころより平熱が低めになっていて、かぜをひいても熱が出にくい。高齢の人の体温の傾向をおぼえておきましょう。

高齢になったときの体温の変化を理解して健康管理に役立ててください。

ずっと変わらなかった平熱も、高齢期には低くなる。
人の体温(ワキ下)は乳幼児のころは高いのですが、成長するとともに少しずつ下がり続け、10歳くらいからはずっと一定の値に落ち着きます。しかし、その後高齢になると再び低下してきます。これは老化で身体機能が落ちてくるためと考えられています。

ですから、若いころの平熱をずっと覚えていても、高齢になれば、現在の平熱とは違っている可能性があります。ときどき、体調のいいときに体温を測り、自分の平熱を確認しておきましょう。

成人と高齢者の腋窩温の比較

【POINT】高齢になったら平熱を測りなおしておく

熱が出たときはすでに重症になっていることも。
人はかぜやインフルエンザなどの感染症にかかると発熱しますが、高齢者では、病状が悪くてもそれほど体温が高くならないケースがよくみられます。高齢の発熱患者では、気づいた時にはすでに肺炎に進行しているなど、重い感染症にかかっていることも多いのです。

【POINT】悪化してもあまり発熱しないことがある

暑さ、寒さに順応する力がおとろえる。
高齢者では暑さ、寒さに対する感覚が鈍くなり、身体の反応も弱くなっています。具体的には、暑くても汗をかきにくく、熱中症をおこしやすくなります。逆に寒くなっても体内の熱をつくる力や熱を維持する力が衰え、低体温症を起こすことがあります。まわりの人たちもふだんから顔色や動作などに気をつけてあげる必要があります。

【POINT】熱中症や低体温症にもご注意

子どもと体温

子どもは体温調節の能力でもよちよち歩き。子どもの健康な体温は、早寝早起きから。

赤ちゃんは暖かくしていればいいの?
小学校に通う子どもが、最近はぼんやりして元気がないような気がする。

赤ちゃんのころはもちろん学童期になっても体温は体の状態を物語っています。

体温調節が未熟な赤ちゃんに気を配ってあげる。
乳幼児はおとなに比べ、体が小さい割には体表面積が大きく、また皮下脂肪が少ないため皮膚から熱が逃げやすいという性質を持っています。とくに、生まれたばかりの時期は寒さにさらさないように注意する必要があります。でも暖かくすればいいかというと、そうではありません。乳幼児は体が小さい割には食事摂取量が多く、成長とともに運動量も多くなってくるため、体がつくる熱の量が多くなります。したがって、首の周りや背中に汗をかいているようなら、涼しくさせてあげましょう。

【POINT】赤ちゃんの暑さ、寒さには、こまめに気を配る

夜型生活は体温のリズムを変えてしまう。
子どもが成長すると、テレビを見たり、ゲームで遊ぶことも多くなります。生活が夜型化し、「遅寝遅起き」のリズムに変わってくると、体温のリズムが普通より3?4時間後ろへずれ込んだ形になりやすくなります。そのため、朝は眠っているときの低い体温で活動を開始しなければならないので体が目覚めず、動きは鈍く、食欲もなくなります。逆に、夜は体温が高いため、なかなか寝つけないという悪循環が生じてきます。このような状態になると、子どもは何となく元気がなく、また夜は不眠を訴えることもあります。
「早寝早起き」の習慣をくずさないように気をつければ、体温のリズムもくずれませんから、朝はしっかり食事をとって、元気にスタートを切れるようになります。

一日の体温リズム

【POINT】早寝早起きは体温のリズムを整える

体温マメ知識

寝起きの脳を動かすのは、朝ごはん。
人間は、ひと晩寝ている間に、茶碗1杯分のエネルギーを消費しています。朝ごはんを食べて、早く脳に栄養を与えましょう。ごはんは、脳に必要なブドウ糖にすばやく変化し、眠っていた脳を活性化させてくれます。

体温マメ知識

平衡温と予測式体温計

体温は本当に3分で測れるの?

ワキで体温を測る時間は、3分あるいは5分。そんな“常識”をもっていませんか?
ためしに、ワキをしっかり閉じて、10分間がんばって測ってみましょう。
どうですか?思っていた“平熱”よりも高めにでていませんか。

水銀体温計や実測式の電子体温計で測るには、10分以上が必要。

ワキが完全に温まるまで測るのが、正しい検温です。
ワキの温度は「体の表面の温度」ですが、しっかり閉じることで体の内部の温度が反映されて温まります。完全に温まった時の温度を平衡温(へいこうおん)といいますが、これを測るのが正しい検温です。平衡温に達するにはワキを閉じてから、10分以上かかります。
※この10分間はあくまでワキが完全に温まるのに必要な時間で、体温計が温まる時間ではありません。

平衛温に達するまでの体温上昇カーブと腋窩(ワキ)のサーモグラフィ

【POINT】「平衡温」を測る=正確な検温

はやく、正しく体温を測るのが、「平衡温予測方式」です。
実測式の弱点ともいえる「測定時間」を短縮するために1983年にテルモが日本ではじめて開発した方式です。
多くの人の体温上昇データを統計的に処理し、演算式にして、ワキであれば10分後の平衡温がどのくらいになるのかを、高い精度で短時間に表示します。したがって、予測式体温計は、数十秒の短時間で正しい体温を測ることができるのです。

平衛温予測検温と実測体温の測定経過モデル

【POINT】平衡温予測方式は速く測る体温計のしくみ

予測式体温計の話

体温を予測するってどれくらい正確にできるの?

正しく体温を測るために、ワキなら10分以上必要なのはわかった。
でも、じっとしていられない子供の体温を測ったり、忙しい時には、ちょっと長いわ…。
そんな声にお応えしたのが、テルモの「予測式+実測式」電子体温計。

予測式の体温計が生まれて四半世紀以上。予測する技術も進歩しました。

実測式では、どうしても無理だった短時間検温。
右の図は点線が平衡温を示しています。実測式体温計では、3分検温(180秒)でも、5分検温(300秒)でも平衡温より低くなります。さらに測定値のバラツキも大きいのです。 1983年、短時間で体温を正しく測ることを目標に、テルモの予測式体温計が、病院用に発売されました。

実測検温での10分値との差の分布

【POINT】実測では3分間でも正確に測れない

はやく体温を測る技術はずっと進歩を続けてきました。
ワキでも人によって温度の高い場所が変わる
右の写真はAさんとBさんのワキ下の温度の分布を示しています。赤い色で表示された温度の高い部分の位置や範囲がちがっているのがわかりま

体の中心ほど高くて安定

テルモは何千人ものデータをもとに予測技術を進化
ワキ下の個人差だけでなく、長年の実績をもとにワキを閉じたときに温まっていくスピード、発熱しているとき、季節、年齢などによる特徴を折り込んだ何通りもの数式を記憶させており、もっとも適した数式を選択して予測できるよう、プログラムしてあります。これにより短時間で適確な体温測定を実現しています。

発熱の有無、個人差などでワキの温まり方は違う

【POINT】テルモは予測技術のパイオニア

耳式体温計の話

耳で測れば、たった1秒。ホントなの?

もちろん、本当です。耳の中の赤外線を検出することで、わずか1秒の測定を実現しています。

耳式体温計なら、たった1秒で検温。むずかる赤ちゃんやお子様に最適です。

テルモの耳式体温計は、体の内部の温度を反映した「耳内温(じないおん)」を測ります。
「耳内温」とは、耳の中の鼓膜及びその周辺の温度のこと。体の内部の温度を反映し安定しています。

耳内温をたった1秒で正確に測る、耳式体温計のしくみ。
耳式体温計は、耳の中から出ている赤外線をセンサーが瞬時に検出することで、耳内温をたった1秒で測ります。体からは体温に相応する赤外線が出ているので、赤外線の量を検出することで温度が測れます。

※耳から出ている赤外線を検出するだけです。耳式体温計からは何も出してはいないので、耳への害はありません。

体の中心ほど高くて安定

【POINT】赤外線の量で体温がわかる

耳には耳の“平熱”があります。

ヒトの体の温度は部位によって違う(4ページ参照)ため、耳とワキの温度も基本的には異なります。また、右の図のように耳とワキの温度の関係は、同じ位の人、高い人、低い人とまちまちです。ですから、一概にワキと比較して高い、低いとは言えません。耳には耳の、ワキにはワキの“平熱”があるので、あらかじめ知っておくことが大切です。

体の中心ほど高くて安定