インクレチン 菊芋

キクイモ講演会 復習その③

キクイモの作用機序は?

主な糖尿病用剤の作用部位について

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スルフォニル尿素薬、速効型インスリン分泌薬は直接膵臓のβ細胞に作用し、インスリン分泌を増強。

αグルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬は小腸へ作用。
前者は小腸におけるブドウ糖吸収を遅延し、食後過血糖を抑制。
後者はインクレチンの分解酵素であるDPP-4を阻害し、インクレチンによるインスリン増強作用長続きさせる。

その他、ビグアナイド薬は肝臓のAMPキナーゼを活性化させ、細胞内脂肪をエネルギー源として燃焼、インスリン抵抗性を改善、乳酸から肝臓で糖新生を抑制。
チアゾリジンは細胞内受容体(PPARγ)に作用し、肥大した脂肪細胞を正常小型脂肪細胞に置き換え、筋肉、肝臓、脂肪での糖取り込みを促進。又、悪玉アディポサイトカイン(TNF-α、IL-6等)を低下、抗動脈硬化作用を持つアディポネクチンの血中濃度を上昇。

といった、作用により血糖降下作用を発揮します。

キクイモは①インクレチンの分泌を刺激する事が判っています。

インクレチンとは、経口摂取されたブドウ糖の刺激により、小腸から分泌されるペプチドホルモンです。小腸上部からGIP(グルコース依存性インスリン分泌ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド1)があり、インスリン分泌性ペプチドホルモンです。

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膵臓のβ細胞からインスリン分泌を促進し、拮抗ホルモンであるグルカゴンのα細胞からの分泌を抑制。また、後者は食後の高血糖抑制や脳への働き、食欲抑制、体重増加の防止が報告されています。
インクレチンはDPP-4(ジペプチジジルペプチダーゼ4)という酵素で分解され、その半減期は2~3分と迅速で、DPP-4阻害薬はその酵素を抑えることでインクレチンのインスリン増強作用を保つ機序です。

②水溶性食物繊維であるイヌリンは胃内でゲル化して糖・塩分・脂肪の吸収を抑制。食物は胃の中に留まり、小腸の通過時間を短縮し、吸収に影響を及ぼしていることも判っています。

③その他、キクイモイヌリンの膵臓への直接作用や脳への作用、インスリン感受性の改善等、今後の研究成果が楽しみです。

ヒト以外のキクイモ摂取動物実験において、糖尿病ラット実験では免疫増強作用(インターフェロンγ誘発)
キクイモ添加飼料により、鶏卵品質改善、鶏産卵期間延長、乳牛への投与では牛乳品質向上。
サルへの投与によりホルモンバランスが改善した等の報告が相次いでます。

キクイモ添加飼料による鶏卵変化

牛乳2

まとめ
メタボリック症候群への効果の期待が大。
1.糖尿病の予防改善(血糖値、HbA1C低下、合併症予防・改善、症状緩和)
2.高脂血症予防改善(コレステロール、中性脂肪低下、血栓予防)
3.高血圧是正(血流改善、代謝促進)
4.肥満対策(低カロリー水溶性食物繊維、便通改善、脂肪燃焼、基礎代謝亢進)
その他の効果として、
摂取後の身体への反応が早く、多岐にわたる。
腸内細菌叢、善玉菌の増加による免疫効果。プレバイオティクスとして期待。
アレルギー症状の緩和
骨塩定量と骨密度の増加(カルシウム吸収亢進)
アルツハイマー病の予防(脳活性化、ホルモンバランス改善)

終わりに、
簡単で継続しやすい生活習慣の改善
食事指導、カロリー制限からの解放
糖尿病合併症をはじめとする症状の緩和
減薬の可能性
生活習慣病をはじめとする疾病予防と健康維持
*既に『キクイモ』を用いた【寝たきり半減】運動も

制限を受ける精神的ストレスからの解放と
QOL(Quality of Life)の向上を
目指し、キクイモによる生活習慣病予防を始めましょう!

と、結びました。
最後に少々拙著書のPRをさせて頂きましたが、当日の売り上げには結びつきませんでした。

インクレチンとSU剤のインスリン分泌促進作用機序の違いについて

インクレチンは、食事摂取により消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するホルモンで、上部小腸にあるK細胞から分泌されるGIPと、下部小腸にあるL細胞から分泌されるGlp1があります。

Glp1の主な生理作用はインスリン分泌促進作用ですが、それ以外に膵グルカゴン分泌抑制作用、消化管運動抑制作用、インスリン感受性亢進作用、そして膵β細胞保護・増殖作用が認められています。GIPはGlp1に比べると作用は弱いとされています。

そして、Glp1やGIPを分解するDPP-4という酵素を阻害して分解を抑制し、インクレチンの血中濃度を上昇させて保つのが、DPP-4阻害剤(ジャヌビア、エクア、ネシーナなど)です。

さて、上述のようにインクレチンがインスリン分泌を促す仕組みと、SU剤がインスリン分泌を促す仕組み(☆)は、実は異なっています。

難しい箇所は省いて、超簡単に言うと、SU剤はβ細胞表面のSU受容体と結合して、カリウムチャンネルを閉じっぱなしにしてしまい、その結果カルシウムが細胞内に流入してインスリンを分泌させます。

この場合、SU剤の作用時間(24~12時間)の間は、血糖が高かろうが低かろうが関係なく、ずっとインスリンはだだ漏れ状態です。だから低血糖が生じやすいのですね。

そして、インスリンを分泌しっぱなしのβ細胞が、疲弊していく可能性があるわけです。

まあ、SU剤というのは、人為的に無理矢理カリウムチャンネルを閉じて、β細胞を騙しているようなものですかね。

一方、インクレチンは、糖質や脂質を摂取すると消化管から分泌されて、β細胞のインクレチン受容体に作用してβ細胞内のサイクリックAMPを上昇させ、インスリン分泌の増幅経路に働きます。

こちらは、糖質を食べて血糖値が上昇し、β細胞内にとりこまれてATPが産生されて、カリウムチャンネルが閉じてカルシウムが細胞内に入ってきたときだけ、増幅経路に働いてインスリンを分泌させます。

血糖値が下がって108mg/dlくらいになると、β細胞はブドウ糖を取り込まなくなり細胞内カルシウムは増加しないので、インクレチン濃度が高くても増幅経路は作用せず、インスリンは分泌されません。

つまり、

1)糖質摂取→血糖値上昇→糖輸送体でβ細胞内にブドウ糖取り込み→β細胞内ATP上昇→カリウムチャンネル閉鎖→脱分極→カルシウムチャンネル活性化→細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌

という、ブドウ糖刺激によるインスリン分泌の一般的な経路の最後の過程

A)細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌

の経路をインクレチンによるβ細胞内サイクリックAMP上昇が増幅させて、
インスリン分泌を促すわけですね。

B)「β細胞内『カルシウム濃度+サイクリックAMP濃度』上昇」→インスリン分泌増幅

というわけです。

こういう作用機序なので、インクレチンは血糖値が高いときのみに、インスリン分泌作用を有し、108mg/dl以下に血糖値が下がってきたら、インスリン分泌作用がなくなるわけなので、単独使用では低血糖は理論的には起こりません。

またSU剤のように、24時間β細胞を鞭打つといった側面は皆無なので、β細胞も疲弊しないのだと思います。

インクレチン(incretin)

インクレチン(incretin)は、「膵臓のランゲルハンス島β細胞を刺激して、血糖値依存的にインスリン分泌を促進する消化管ホルモン」として定義され、具体的にはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP)とグルカゴン様ペプチド-1 (glucagon-like peptide-1:GLP-1)の2つを指す。GIP は上部消化管に存在する腸内分泌細胞 (enteroendocrine cells)の一種である K 細胞が含有し、GLP-1 は下部消化管の腸内分泌細胞である L 細胞が含有する。

インクレチンの血中濃度は食後数分~15分以内に上昇し、食後の血糖上昇によるβ細胞からのインスリン分泌を促進する。このようないわゆる「インクレチン効果(incretin effect)」によって、インクレチンは食後の血糖恒常性(glucose homeostasis)や耐糖能 (glucose tolerance)の維持に貢献していると考えられている。

そして分泌されたインクレチンは、消化管、腎臓、前立腺などの上皮細胞や内皮細胞、リンパ球などの細胞膜に発現し、可溶性タンパク質として血中にも存在しているジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase-4:DPP-4)によって速やかに不活性化される。このため、インクレチンの血中半減期は数分とごく短いことが知られている。

以上のようなインクレチンの性質から、近年、特に2型糖尿病を対象として、インクレチンを標的とした新たな食後高血糖改善薬の開発が進められた。インクレチンは、血糖依存的にインスリン分泌を促進することから、他の糖尿病治療薬にみられる低血糖をもたらす副作用が起こりにくいと考えられている。現在開発されているインクレチン関連製剤は、インクレチンの分解を阻害することによって血中インクレチン濃度を維持する DPP-4 阻害薬と、GLP-1 受容体作動薬に大別される。

前述の通り、インクレチンは食後数分~15分で血中濃度が上昇する。したがって、上部消化管(十二指腸、空腸)に存在する K 細胞は、食事によって流入した栄養素を直接感知して GIP を分泌すると考えられる。しかし、下部消化管(回腸、大腸)に存在する L 細胞まで食後 15 分以内に栄養素が到達するというのは早すぎるうえ、そもそも大腸に存在する L 細胞には食事由来の栄養素がそのまま到達するとは通常考えられない。このような矛盾を説明するために、上部消化管に到達した栄養素の刺激によりK 細胞から分泌された GIP や、迷走神経-迷走神経反射を介して間接的に下部消化管の GLP-1 分泌が惹起されるという可能性が示唆されているが、現時点では不明確である。

一方で、L 細胞に短鎖脂肪酸受容体である遊離脂肪酸受容体(free fatty acid receptor-2:FFA2)および FFA3 が発現していたことから、下部消化管の L 細胞は、腸内細菌の産生する短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids:SCFAs)を受容して GLP-1 分泌を惹起する可能性が示唆されている。 腸内細菌の関与した下部消化管における新たな「インクレチン効果」の解明が待たれるところである。