牛乳蛋白と1型糖尿病の発症について 

牛乳蛋白と1型糖尿病の発症について

http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2010-11-17 より~

 

北欧フィンランドは、
世界一1型糖尿病の多い国として知られています。

1900年代の疫学研究によると、
母乳ではなくミルクで赤ちゃんを育てると、
それだけ1型糖尿病が増加する、
という結果が報告されました。

否定的な研究もありますが、
その後も同様の研究結果は相次いでいて、
どうやら1型糖尿病になり易い体質を持っている赤ちゃんでは、
母乳よりミルクの方が、
その後の糖尿病の発症が多い、
ということは事実のようです。

それでは一体何故ミルクでは糖尿病が起こり易いのでしょうか?

1つの仮説は牛乳に含まれる、
人間とは異なる蛋白質が、
まだ未熟な赤ちゃんの免疫系を刺激して、
自己抗体を作り出す、
1つの要因になっているのではないか、
と言うことです。

このうち、牛乳蛋白の8割を占めているのが、
カゼインという蛋白質です。

牛乳アレルギーのお子さんでは、
このカゼインをより小さな粒に分解した、
加水分解カゼイン乳と呼ばれるミルクが、
人工乳として使用されることがあります。
日本でもそうしたミルクは販売されています。

今回発表された論文は、
通常のミルクとこの加水分解カゼイン乳を、
母乳が使用出来ない赤ちゃんにそれぞれ使用し、
どちらの赤ちゃんで、
その後の膵臓に対する自己抗体が、
誘導されたかを見たものです。

1型糖尿病の多いフィンランドで、
230名の糖尿病になり易い遺伝子を持つお子さんを対象にし、
平均7.5年の観察を行なったところ、
加水分解カゼイン乳を使用した赤ちゃんの方が、
有意にその後の抗体の出現率が低かったのです。

つまり、糖尿病の素因のあるお子さんでは、
極力母乳栄養を選択し、
それが困難な場合には、
加水分解カゼイン乳を使用した方が、
その後の糖尿病の発症は少なくなるのでは、
と推測されるのです。
勿論これは免疫系がまだ未熟な、
乳幼児期にみに成立する話で、
それ以降はまた別個の話として、
考える必要があります。
安易に「牛乳を飲むと病気になる」
というような文脈で、
乱暴に扱うべきではありません。

今日は牛乳に含まれる蛋白質と、
糖尿病との関連についての話でした。