糖尿病による腎症 データの読み方

 

糖尿病による腎臓の病気

http://www.dm-net.co.jp/seminar/14/index_2.php#chap4sec2 より~

微量アルブミン尿やeGFRで早期発見!

糖尿病性腎症は自覚症状のないまま、じわじわと進行していきます。腎臓の病気というと、尿タンパク検査が陽性になったり、からだにむくみが出ることなどがよく知られていますが、それらの変化が起きるのはかなり腎症が進んでからで、病気の進行を遅らせ透析開始を先延ばしすることが治療の中心になってしまいます。ですからできるだけ早期に腎症を発見する必要があります。

尿中のタンパク(アルブミン)を調べる

早期の腎症を発見するためには、微量アルブミン尿検査が有効です。この検査は、尿の中の非常に微量のアルブミンを、高感度の検査法で見つけだすものです。タンパクはからだに必要なものなので、腎症が起きてなければ、高感度の検査法でも尿タンパクはほとんど見つかりません。糸球体のダメージがひどくなるに従い、微量アルブミン尿から顕性アルブミン尿(タンパク尿)へと進みます。
一般に、腎症は血糖コントロールが悪いと、糖尿病の発病から10年ぐらいで発症するといわれていますが、2型糖尿病では発病がいつなのか正確にわからないため、糖尿病である人は血糖コントロールを良好に保っている人も含めてみなさん、少なくとも年1回は微量アルブミン尿検査を受けてください。

血液中のクレアチニン値で腎機能を推測

実際に腎機能低下の程度を把握するには、血液中のクレアチニンの量を測定します。クレアチニンは老廃物の一種で、腎機能の低下に伴い血中濃度が高くなります。血中クレアチニン値を年齢や性別で調整した「eGFR(推算糸球体ろ過量)」という値が腎機能の指標になります。腎機能のより正確な把握のために、尿を1日分蓄えて検査することもあります。


腎症が発見されたら

慢性腎臓病と心臓・血管病の悪循環


糖尿病性腎症などの慢性腎臓病(英語の頭文字からCKDといいます)では、心臓・血管病になりやすくなります。また、心臓・血管病があると、腎機能が低下しやすくなります。この関係は「心腎連関」と呼ばれ、最近注目されています。両者には、高血圧や慢性の炎症、交感神経の亢進、血液量を調整する仕組みの異常などの共通の原因があることもわかっています。このようなことから、糖尿病性腎症でも腎機能ばかりでなく、心臓・血管病にも注意しながら治療を進めます。

 

 

ここ

腎症の進行と病状・治療 血圧計などで、血圧チェックを習慣づける

病  状 検 査 値 治  療
尿アルブミン
(mg/gCr)
eGFR
(mL/分/1.73m
目 的 方  法







臨床的症状なし 30未満
(正常アルブミン尿)
30以上 腎症を予防する 血糖のコントロールに努めよう
健康的な食事に気をつけよう
食塩・タンパク質の過剰摂取をさける
タンパク質は摂取エネルギーの20%以下に
高血圧の治療に努めよう
食塩1日6g未満(高血圧の場合)








自覚症状はないが、この時期から血圧が上がる人が多くなる 30~299
(微量アルブミン尿)
30以上 腎症の進行を抑える

心臓・血管病を予防する

厳格な血糖コントロール
血圧の管理
必要に応じて降圧薬(RAS抑制薬など)を服用
食塩の摂取量を再チェック
血清脂質の管理
必要に応じて脂質低下薬を服用
RAS抑制薬:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬やACE阻害薬などの降圧薬。腎臓を保護する働きもあるとされています








タンパク尿が陽性

腎機能が急速に悪くなり透析導入も視野に入ってくる

人によっては、この時期からむくみが出てくる

300以上
(顕性アルブミン尿)、あるいは

持続性タンパク尿
(0.5g/gCr以上

30以上 腎症の進行を抑える

心臓・血管病の予防・治療

厳格な血糖コントロール
厳格な血圧の管理
食事療法の切り替え(腎症の治療に重点を置く)
食塩・タンパク質の摂取制限
食塩1日6g未満、3g以上
タンパク質は1日体重1kg当り1g以下(できれば0.8g)が目標
血清脂質の管理の継続
むくみをおさえる
必要に応じて利尿薬を服用







腎臓の糸球体で血液がろ過されず老廃物(尿毒症物質)が血液中にたまり細胞の働きが悪くなる
尿毒症:貧血・体がだるい
尿毒症性神経痛:夜間手足が痛い・皮膚がかゆい
ネフローゼ症候群:慢性的な体のむくみ・尿タンパク3.5g以上(10~15gにもなることがある)
注意! 一見糖尿病がなくなったようにみえる
インスリンによる薬物療法の場合、腎機能が低下しているため分解が遅くなり、その分体内での作用の持続性が長くなる
eGFRが30未満なら、
尿アルブミン(タンパク)に関係なく腎不全期
30未満 自覚症状を抑える

必要に応じて透析開始の準備

心臓・血管病の予防・治療

腎症治療により重点を置いた食事療法
食塩・タンパク質・カリウムの摂取制限
食塩1日6g未満、3g以上
タンパク質は1日体重1kgあたり0.6~0.8g
血圧管理・血清脂質管理の継続
低血糖に注意
SU薬はインスリン製剤に変更
むくみをおさえる
必要に応じて利尿薬を服用
場合によって水分制限








透析療法

または

腎臓移植

腎症以外の合併症の予防・治療

心臓・血管病の予防・治療

透析の方法にあった食事療法

HbA1cではなくグリコアルブミンを指標に血糖コントロール

低血糖に注意

※腎症の食事療法について詳しくは、このコーナーの「食事療法のコツ(3) 腎症のある人の食事」をご参照ください。