スルホニル尿素薬(SU薬)

●糖尿病内服治療薬の中では、最も多く使用されている薬です。
SU(エスユー)薬は、インスリンを合成する膵臓のβ細胞に働き、インスリンの分泌を促進させる薬です。また、末梢の筋肉でのブドウ糖利用を高め、肝臓からのブドウ糖放出を抑制する膵外作用もあるとされています。その主な作用機序をもう少し詳しく説明しますと、下記のようになります。


血液中のブドウ糖濃度が上昇すると、ブドウ糖は膵臓のインスリン分泌細胞(β細胞)の表面に発現するGLUT2という運び屋により、細胞の中に取り込まれます。取り込まれたブドウ糖は代謝を受け、ミトコンドリアでATP(エネルギー)が産生されます。このATP濃度が増すと、細胞表面のカリウムチャンネルを閉鎖します。そうするとKが細胞外にでなくなり、細胞膜の脱分極が起こり細胞内外で電位差が生じます。その結果、カルシウムチャンネルが活性化しカルシウムが細胞内に流入し、カルシウム濃度が上昇すると、細胞は活動的になり、インスリンを遊離することになります。
SU薬は、カリウムチャンネルの一部を構成するSU受容体と結合して、ATPとは無関係にカリウムチャンネルを閉じてしまいます。この結果、カルシウムが細胞内に流入して、インスリンを分泌することになるのです。

危険なSU薬(スルホニル尿素薬)やめ糖質制限で!

糖尿病性腎症は糖尿病につきものの血糖値降下促進剤です。わたしは、これで腎臓機能悪化に往生しています。糖尿病になって、1年くらいたったころ、急に「腎透析の講習受けませんか?」と打診されなんのことか、解りませんでした。検査結果みると、クレアチニンの数値があがり、ああ、そうなんだ?と、意味がわかりませんでした。

いろいろ調べるうち、インシュリン注射が原因かなあとしらべましたが、判明せず、SU剤のグラクティブ錠に行きつき、結果的にインシュリン注射も薬もやめ、血糖値もやや正常になりました。3か月でなおしました。

まさかインシュリン促進剤のグラクティブ錠が腎透析の要因とは、思いもしませんでした。ほとんどのかたが、腎透析の不安におびえます。

いかに薬の怖さが、理解できました。研究してみてください。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

グラクティブ錠の効果と副作用

グラクティブ錠(一般名:シダグリプチンリン酸塩水和物)は2009年から発売されている糖尿病の治療薬になります。糖尿病の治療薬の中でも「DPP4阻害薬」という種類に属します。

グラクティブはインスリンの分泌量を増やすことで血糖値を下げるお薬になります。しかし古い糖尿病治療薬と異なり、インスリンを過剰に分泌させない工夫がされており、これにより低血糖のリスクがほとんどない安全性に優れるお薬になります。

糖尿病治療薬にもたくさんの種類のお薬があります。これらの中でグラクティブはどのような位置付けになるのでしょうか。

グラクティブの効果や特徴、どのような方に向いているお薬なのかについてみていきましょう。

なおグラクティブは「ジャヌビア」という糖尿病治療薬と同じお薬になります。ジャヌビアの方が知名度がありますが、これらは販売している会社が異なるだけで主成分は全く同じですので、両者は効能・作用も同等になります。


 

続きを読む

インクレチンとSU剤のインスリン分泌促進作用機序の違いについて

インクレチンは、食事摂取により消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するホルモンで、上部小腸にあるK細胞から分泌されるGIPと、下部小腸にあるL細胞から分泌されるGlp1があります。

Glp1の主な生理作用はインスリン分泌促進作用ですが、それ以外に膵グルカゴン分泌抑制作用、消化管運動抑制作用、インスリン感受性亢進作用、そして膵β細胞保護・増殖作用が認められています。GIPはGlp1に比べると作用は弱いとされています。

そして、Glp1やGIPを分解するDPP-4という酵素を阻害して分解を抑制し、インクレチンの血中濃度を上昇させて保つのが、DPP-4阻害剤(ジャヌビア、エクア、ネシーナなど)です。

さて、上述のようにインクレチンがインスリン分泌を促す仕組みと、SU剤がインスリン分泌を促す仕組み(☆)は、実は異なっています。

難しい箇所は省いて、超簡単に言うと、SU剤はβ細胞表面のSU受容体と結合して、カリウムチャンネルを閉じっぱなしにしてしまい、その結果カルシウムが細胞内に流入してインスリンを分泌させます。

この場合、SU剤の作用時間(24~12時間)の間は、血糖が高かろうが低かろうが関係なく、ずっとインスリンはだだ漏れ状態です。だから低血糖が生じやすいのですね。

そして、インスリンを分泌しっぱなしのβ細胞が、疲弊していく可能性があるわけです。

まあ、SU剤というのは、人為的に無理矢理カリウムチャンネルを閉じて、β細胞を騙しているようなものですかね。

一方、インクレチンは、糖質や脂質を摂取すると消化管から分泌されて、β細胞のインクレチン受容体に作用してβ細胞内のサイクリックAMPを上昇させ、インスリン分泌の増幅経路に働きます。

こちらは、糖質を食べて血糖値が上昇し、β細胞内にとりこまれてATPが産生されて、カリウムチャンネルが閉じてカルシウムが細胞内に入ってきたときだけ、増幅経路に働いてインスリンを分泌させます。

血糖値が下がって108mg/dlくらいになると、β細胞はブドウ糖を取り込まなくなり細胞内カルシウムは増加しないので、インクレチン濃度が高くても増幅経路は作用せず、インスリンは分泌されません。

つまり、

1)糖質摂取→血糖値上昇→糖輸送体でβ細胞内にブドウ糖取り込み→β細胞内ATP上昇→カリウムチャンネル閉鎖→脱分極→カルシウムチャンネル活性化→細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌

という、ブドウ糖刺激によるインスリン分泌の一般的な経路の最後の過程

A)細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌

の経路をインクレチンによるβ細胞内サイクリックAMP上昇が増幅させて、
インスリン分泌を促すわけですね。

B)「β細胞内『カルシウム濃度+サイクリックAMP濃度』上昇」→インスリン分泌増幅

というわけです。

こういう作用機序なので、インクレチンは血糖値が高いときのみに、インスリン分泌作用を有し、108mg/dl以下に血糖値が下がってきたら、インスリン分泌作用がなくなるわけなので、単独使用では低血糖は理論的には起こりません。

またSU剤のように、24時間β細胞を鞭打つといった側面は皆無なので、β細胞も疲弊しないのだと思います。