ウイルス感染が原因の1型糖尿病 原因遺伝子を世界ではじめて発見

九州大学の研究グループは、ウイルス感染が原因で発症するとみられる1型糖尿病のリスクを高める遺伝子を、世界ではじめて発見したと発表した。1型糖尿病の発症を予防するワクチンの開発につながる成果としている。

1型糖尿病を予防するワクチンの開発につながる研究成果

膵臓のβ細胞が破壊されインスリンが絶対的に欠乏し発症する「1型糖尿病」は、自己免疫が原因で発症する「タイプA」と、他の疾患に起因しない特発性の「タイプB」とに分類される。 小児~思春期に発症することの多い1型糖尿病は、発熱など感染症の症状を伴い発症するケースがあり、ある種のウイルス感染が原因のひとつと考えられている。ウイルスが原因で発症する1型糖尿病は、「タイプB」の主な原因と考えられているが、まだ不明の点も多い。

九州大学保健学部門の永淵正法教授(ウイルス免疫学)らは、ウイルス感染の防御に関わる「チロシンキナーゼ2遺伝子」(Tyk2)に注目し実験した。

脳心筋炎ウイルスに感染すると高い確率で1型糖尿病を発症する3系統のマウスの遺伝子を調べ、2系統でTyk2の変異をみつけた。この遺伝子変異があるとインスリンをつくる膵臓のβ細胞が壊され、感染3日後から1型糖尿病を発症することを確かめた。

遺伝子変異のあるマウスにウイルスが増えるのを抑えるインターフェロンを投与したところ、ウイルスに対する抵抗力が回復したが、膵臓のβ細胞では回復力が少ないことが判明。Tyk2遺伝子の変異があるとインターフェロンに対する反応が弱くなることを突き止めた。

1型糖尿病を含む多くの疾患は、複数のさまざまな遺伝子が組み合わさることで発症リスクが高まると考えられている。1型糖尿病の発症リスクを高める遺伝子の突然変異である「感受性遺伝子」をもつマウスを用いれば、1型糖尿病の原因となるウイルスを特定でき、ワクチンを開発できる可能性がある。

 

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