腸が老化すれば、身体のサビも加速する

活性酸素は強い酸化力によって「身体をサビつかせる悪者」として有名ですが、じつはホルモン生成の手助けをしたり、外敵が侵入してきた際に白血球から放出されて敵をせん滅したり、有用な働きもしています。

ところが、ひとたび大量発生すると、コレステロールや中性脂肪といった脂質を酸化させて過酸化脂質という有害物質をつくり出し、細胞膜やDNAを傷つけて破壊してしまいます。また、過酸化脂質が脳細胞の細胞膜内に増えると、アルツハイマー病を引き起こす原因と考えられている「アミロイドβタンパク」というタンパク質を、脳細胞の表面に集積しやすくしてしまうこともわかっています。

このように活性酸素は腸脳の老化や病気を引き起こす大きな要因となっているのですが、その発生を完全に止めることはできません。なぜなら呼吸によって取り込まれた酸素のうち2パーセントは活性酸素と化すからです。先ほど触れたように、免疫細胞も外敵と闘う際に活性酸素を生じさせます。

さらに現代人の多くは、化学物質や紫外線、電磁波などにさらされ、食生活からも日々酸化した食物を取り込んで、活性酸素がつくられやすい環境にあります。
しかし発生を止められないからこそ、人体はまた活性酸素による細胞へのダメージを防ぐシステムをきちんと用意しているのです。それが他ならぬ体内酵素です。詳しくは「抗酸化酵素」と呼ばれるものです。

身体と脳をサビから守る抗酸化酵素「SOD」

 

抗酸化酵素の代表にSOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)と呼ばれるものがあります。SODは活性酸素を酸素と過酸化水素に分解し、中和します。そしてSODによって分解されて生じた過酸化水素は、さらにカタラーゼとグルタチオンペルオキシダーゼという体内酵素によって酸素と水に分解され、無害化されます。
ですから体内でSODが産生されれば、細胞を若く元気な状態に保つことができるというわけなのです。

とはいえ、ここでひとつ問題があります。活性酸素の暴挙から細胞を守ってくれるSODは、中年期以降になると急激に産生量が低下していくのです。加えて腸が老化し、腸内細菌の働きが悪くなればますます産生量を減らしていくことになります。

ある年齢を境に急に老け込み出したという人は、ただでさえつくられにくくなっているSODが、腸の老化で輪をかけて少なくなり、活性酸素による細胞の老化を食い止めることができなくなっている状態といえるでしょう。

見た目の老化はもとより、気力がなくなる、気持ちが沈むといった精神面の老化も、大本は腸が一気に老けて、体内酵素をつくり出せなくなっていることにあります。

年齢に伴うSODの産生量の低下を緩やかにし、腸がいつまでも若く健康に働いてくれれば、身体も脳もサビません。だから身体も頭も健康な状態で、与えられた寿命を生き抜くことも不可能ではないのです。
健康長寿のすべての秘訣が腸にある、といっても過言ではないのです。

なお、今回の記事内容については、10月16日発売の拙著『認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい』(SB新書)でもふれています。あわせてご一読いただければ幸いです。

(了)

 


 

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