白内障術後のメガネ

http://www.meganehamaya.biz/hakunaisyou.html より~

■白内障術後のかたのメガネ
白内障術後のかたに、眼位ズレ(斜位)(←クリック)が発生するかたがおられます。 原因としては「水晶体嚢の収縮」や「眼内レンズの支持部の変形」、「眼内レンズがキッチリ入っていない」などによる眼内レンズの位置ズレがあります。
斜位になると、斜位の程度や斜位の方向などにより、 ・モノが時々二重に見える。 ・焦点が合わせづらくなる。 ・根気がなくなる。 ・首、肩コリが強くなる。 ・車の運転が怖くなる。 ・近業時に不快感が出てくる。 などの症状がでてくる場合があります。
これらの症状がでてきた場合、眼は脳の出先機関ですから、脳にも悪い影響を及ぼします。 ということは、全身にも影響を及ぼします。
白内障術後のかたの斜位検査はよりキッチリと正確に行い、適切に斜位の修正をしなければいけません。
しかし、残念ながら眼科で斜位の検査を丁寧にしているところは少ないのが現状です。 術後に「良く見えるのですが、なんだか具合が悪い・・・」と訴えても、眼科からは「白内障手術は問題ありません」と気のせいで片付けられることもあります。 「斜位は矯正しない・・・」とお考えの眼科もあります。 つまり、生活的に支障があっても医学的には「白内障手術は上手くいって、視力は良くでて、片目、片目では問題ない」ということです。 やはり、医学だけでは生活面を含めて全般的に診るの難しい点があります。
平成20年に白内障術後に斜位になったかたの事例です。


事例1
眼科処方箋をご持参でしたが「見えづらい」ということで当店で検査しました。
以前掛けられていた度数は 平成16年眼科調製度数 R S-1.25D  L S-0.50D
今回、ご持参眼科処方度数 R S-1.25D C-0.75D Ax90 L S-0.75D  この度数では「見えづらくて、具合が悪い」とのことでした。
当店測定度数は R S-2.75D  L S-1.00D C-0.50D Ax90 (Sは近視度数、Cは乱視度数、Dは度数の単位、Axは乱視軸です)
上下斜位がありまして、右眼3△ダウンでした。 (△は斜位の量、ダウンは斜位の方向です)
「見えづらい」と訴えられたのは、度数のせいもありますが、眼科では斜位の矯正はされていないので、そのための不具合を訴えられていると思われます。 それで、お客様との共同作業で具合のよさそうな斜位量を丁寧に検査しました。
すると、右眼△2ダウンが良いということになり、
R S-2.25D       2△ダウン L S-0.75D C-0.50D Ax90 の度数で調製することになりました。
後日、お渡ししまして、当店調製度数で「良く見えて具合がいい」ということでした。 ところが、お客様が処方度数を発行した眼科に受診にいったところ、「レンズの焦点が上下に凄くズレているからやり直してもらいなさい」と眼科に言われたと来店されました。
ウーン・・・・・。 眼科には斜位に関する「調製報告書」を送ることにしました。

眼鏡調製報告書

○○眼科 A先生              平成20年4月○日メガネのハマヤ 眼鏡士 浜田 清 前略

貴眼科におかれましては、日々ご清祥のことと存じます。 3月○日に貴眼科発行の眼鏡処方箋を持参されました、B様の眼鏡の調製につき、ご報告をいたします。
貴眼科発行の処方箋の度数は下記の通りでした。  R=S-1.25 C-0.75 Ax90  L=S-0.75               遠用PD=61
B様に貴眼科処方箋度数で見え方の確認をしていただいたところ「見えにくい」とおっしゃいました。それで、当方でも屈折検査をしてみました。
5m自覚的屈折検査(両眼開放屈折検査) 両眼開放での一次矯正値(両眼調節バランステストの前の値)    RV=(0.8× S-2.75           )PD=31    LV=(0.8×S-1. 00 C-0. 50Ax90)PD=31.5
眼位は遠見で「十字テスト」右2△基低下方 「コの字テスト」右2△基低下方 「濃いレンズ法」右3△基低下方 左右の垂直経線の度数差が1.75ありますので、光学的斜位が検出されないよう、配慮して測定しています。
ここから両眼調節バランステストをしますと、左右差は1.75Dでよいことになりました。 それから、両眼調節緩解テストをしますと、上記の一次矯正値度が両眼開放屈折検査の最終結果になりました。
B様の眼位は右眼上斜位でした。それで、B様に検査結果のプリズムで有無をお聞きしましたら「プリズムはあったほうが見やすくて楽」とおっしゃいました。いろんな度数を試していただいた結果、(もちろん、貴眼科処方度数とも見比べてもらっています)
調製度数は R S-2.25 1.5△B.D. L S-0. 75 C-0. 50Ax90 0.5△B.U.に決定しました。
プリズムに関してはやはり「いれた方が気持がいい、のけたら気持が悪い」とのことでしたので、上記のプリズムを入れました。

フレーム玉型中央に、上記のプリズム度数は正確に間違いなく入っています。

(左右でプリズムを変えているのは、レンズの厚みに配慮したためです)

当方では、ほとんどのかたに眼位検査はしています。特に、白内障術後のかたは術後に眼位ズレが発生するかたがおられますので、慎重に眼位検査をします。
調節バランスもきっちりと整えて、快適に掛けられるメガネ調製をしています。
また、深視力が必要なかたや、スポーツ選手、斜位の方などには視機能トレーニングのアドバイスもしています。(深視力計も置いています)
4月○日B様がご来店されまして貴眼科から「光学中心が合っていません。やりなおしてもらってください」と指示を受けました。と、おっしゃられました。
それで、再度眼位のことを詳しくB様にご説明をいたしました。「このメガネはB様の眼位を整えるために、光学中心は眼位を修正した所定の位置にキッチリと入れています」と。
もちろん、再度貴眼科処方度数と見比べてもらいました。 やはり、貴眼科処方度数では「見えづらい、具合が悪い」とのことでした。よって、B様には現在プリズム眼鏡は必要だと思いますので、やりかえる必要はないものと思われます。
B様も具合の悪いメガネにやりかえるのは、拒否されました。
私といたしましても、眼鏡士として全身全霊をささげる気持で仕事をしています。丁寧に眼位の測定をして、丁寧にプリズム入りメガネ調製をしていますが、プリズム調製をしているメガネに「光学中心の高さが合っていない。やり直せ」と言われましても困惑してしまいます。
B様は糖尿病などがありますので、度数も不安定なところもありますでしょうし、眼位に関しても眼位の変動もおこりえます。
B様にはそのこともご説明していますので、「変動が合った場合はレンズの交換ということになります」ともお伝えしています。
なお、光学中心に関しては、プリズムなしメガネでも必ず、左右で光学中心の高さが揃わないといけないということは、ありません。
左右で目の高さが違うかたは、左右の光学中心を変える場合もあります。また、不同視のかたで、常用視線位置でプリズム誤差がないように、左右で光学中心の高さを変える場合もあります。
繰り返しになりますが当方で調製するメガネの光学中心(アイポイント)はお客様の眼の状態に合わせて、意図して左右で違えることもありますので、ご留意していただきましたら幸いです。
今回は私の責任で当方で処方させていただき、処方責任は当方にあります。次回も当方で処方する場合は当方で責任を持ちます。
事例2は『こちら
■当店は白内障術後のかたは斜位の検査を丁寧にいたします
人間の眼は二つあり、両眼の共同作用は生活する上でとっても大切です。 両眼の連動(両眼視機能)が上手くいかなくて不具合を訴えるかたは少なくありません。 当店が斜位の検査をキッチリと行い、白内障術後のかたのフォローをしていきます。
眼科の眼鏡処方箋をご持参のかたは、眼科処方箋度数通りで調製するか、当店測定度数で調製するかのご判断をしていただくことになります。 当店処方で調製の場合、処方責任は当店になり、結果責任は当店とお客様の共同責任ということになります。 眼科処方で調製の場合、責任の所在があいまいになりがちです。 それは、度数が良かったとしても、調整技術が悪ければ具合の良いメガネにはならず、度数がマズければ必ずペケのメガネになります。 もし、メガネの具合が悪い場合「眼科とメガネ屋、どちらの責任だ・・・」ということになり、お客様がタライ回しになりがちなのです。
<当店は眼科とのコラボレーションが必要だと思い、下記のように考えています>
眼科で眼鏡適用と見なした人に対する眼鏡処方については、眼鏡店でも処方が可能だと考えられる場合には、眼科では眼鏡の度数を決めないで、その度数選定は眼鏡店の眼鏡技術者に委ねるのがよい。
もし、「それではどんなメガネができるのかわからない」という心配があれば、屈折度数(自覚検査での全矯正値)を書いたものを眼鏡ユーザーに渡して、それを参考にして眼鏡店で調製度数を決めるようにすればよい。
眼鏡ユーザーや、眼疾患などで眼科での診療を必要とする人達のためには、眼科と眼鏡店は良き協力関係になるのが望ましい。
しかし、眼科が眼鏡処方箋を発行する限り、眼鏡店と眼科は全面的な同志にはなれない。眼科と眼鏡店で何かもめることがあったとすれば、そのほとんどが眼科の発行した眼鏡処方箋に起因している。
眼科が眼鏡処方箋を発行するのをやめれば、眼科と眼鏡店の間にもめる要素はほとんどなくなる。 それは国民にとって何よりの幸せである。
眼科も眼鏡店もユーザーも、わずらわしい眼鏡処方箋から解放されることは、良きことである。それはまさに三方一両得と言うべき賢策である。
こちらにもどうぞ→「ユーザー本位の眼鏡処方を考える会」(←クリック)

また、眼内レンズの種類によっては、モノの青みがかって見えるなどの違和感を訴えるかたもいます。 そんなかたのためのカラーフィルターレンズもあります。
なお、白内障術後の視力が低下することがあります。
①黄班浮腫 術後の炎症が網膜に及び「嚢胞状黄班浮腫」が起こることがあり、黄班部が腫れて視力が低下します。 早期にステロイド剤を内服することで、炎症を抑え、視力を回復することができます。 しかし、対応が遅れると、視力が十分に回復しないことがあります。
②後発白内障 後嚢に生じる白内障で、術後しばらくして、後嚢に濁りが生じてくることがあります。これは、嚢の内側に残っていた、水晶体上皮細胞が術後増殖したためにおこります。 レーザー治療で対応ができます。レーザー光線で混濁した後嚢に小さな孔をあけ光が通るようにすると、視力は回復します。

■白内障術後のかたのためのカラーフィルターレンズ
白内障術後のかた、また白内障手術時に眼内レンズを移植されたかたは、人水晶体の除去により、羞明感や眼内レンズの種類によっては青みがかって見えるなどの違和感を感じておられます。
そんなかたのために白内障術後専用「カラーフィルターレンズ」があります。 このカラーフィルターレンズは人水晶体に近い透過性を持っていますから、術前と変わらない自然の明るさや、自然な色の見え方が得られます。
カラーフィルターレンズは、カラー3タイプ。
カラーフィルターレンズは、より適正な色や光のコントロール機能が得られるように、3段階のカラー濃度を揃えました。
このカラー濃度を屋外、屋内と使い分けることで、見やすさはより高まります。
例えばSY-25は特に屋内用に、YG-35は屋内・屋外用に、またDG-50は特に屋外用に向いています。

当店はカラーフィルターレンズの見本があります。実際にテストフレームにカラーフィルターレンズを装着して、試していただくことができます。 青みがかって見えるなどの違和感のないかたは、透明のレンズで問題ありません。

正常な眼の見え方。
53才の正常にものが見える人の眼と正常な色彩感度(水晶体がやや黄褐色に混濁しています)。
人水晶体摘出眼および眼内レンズ移植眼。
人水晶体摘出により、術前より黄色系を強く感じるようになります。
カラーフィルターレンズレンズ着用。
人水晶代とほぼ同じ透過率を持つ カラーフィルターレンズをかけることにより (青色系を減少させる)、53才の正常な 人が見る色彩とほぼ同等になります。
YG-35タイプでお作りしたメガネです。↓

白内障術後のかたのメガネフレーム
白内障術後のかたの専用メガネです。 眼の周辺部をガードして、眩しい光線や紫外線からより眼を守ります。

・サイズ52□16 天地幅31mm ・サイズ56□17 天地幅35mm
白内障点眼治療薬の効果は
「白内障 日本独自の点眼薬投与、科学的根拠なし 厚労省指針」
という新聞報道がありました。
読売新聞2003年6月24日
失明の原因となる白内障について、厚生労働省研究班が初の診療指針をまとめた。手術を主要な治療に位置づける一方、広く使われている目薬や飲み物には「効果に関する十分な科学的根拠がない」と指摘した。白内障の薬物治療は米国など先進諸国では行われておらず、日本の「薬漬け医療」の見直しが迫られそうだ。27日から京都で開かれる日本白内障学会で報告される。
白内障は、濁った水晶体を除去して人工の眼内レンズを入れる手術が根本的な治療法で、日本では年間80万件実施され、95%の人で視力が0.5以上に回復している。一方、白内障の進行を抑える目的で目薬(成分名ピレノキシン、グルタオチン)や飲み薬(チオプロニン、パロチン)も多用されている。
研究班はこれらの薬について、過去の臨床試験データを検討したところ、症例数が少なすぎたり、評価方法に客観性が欠けていたり、信頼度の高い試験は殆ど無く、有効性は十分証明されていないことがわかった。これらは日本独自の薬で、欧米の診療指針には薬物治療の項目がない。 ピノシキレン(商品名カタリンなど)の目薬は40年以上前に認可され、広く使われている薬で、薬局で買うこともできる。指針は現場への影響を配慮し、「投薬を考慮してもよいが、十分な科学的根拠がないため、充分なインフォームドコンセントを得た上で使用することが望ましい」としている。また、白内障予防薬として使われることのあるビタミンC,ビタミンE、ベータカロチンについては大規模試験で効果が認められておらず投与は推奨できなしとした。
多くの医療機関では患者は数週間ごとに通院、投薬を受けている。研究班の茨城信博・日本医大千葉北総病院教授は「効果の不明な薬が、定期的に通院させるための手段として使われている実態が問題だ。白内障のあり方を考え直す必要がある」と話している。白内障の点眼治療薬は白内障の濁りを取るという効果はありません。やはり現在においては白内障の根本的治療は手術だけだといえます。 白内障が進行して、日常に不自由を感じるのであれば、手術の適応と考えられます。
眼科によりましては、早期に手術をすすめるところもありますが、あまり早い時期にするのも問題がありそうです。 かといって、進行した白内障ほど、また、高齢者ほど合併症が多くなるなどのリスクも伴ってきますので、いたずらに手術時期を先延ばしにするのもよくないみたいです。
なお、情報によりますと、レーシック手術を受けている方は、眼内レンズの度数決定の際に影響がでてくるようです。 これは、眼内レンズの度数を決める際に、眼軸長や角膜のカーブ、前房深度など様々なデータを必要としますが、レーシック眼ですと角膜のカーブが自然でないため、通常使用する眼内レンズの度数決定のための計算式が使えなくなるためです。
最近では、レーシック術後の方向けの眼内レンズ度数を求める計算式というのが考案されて、かなり誤差は少なくなってきたようですが、眼科医の先生によっては慎重な考えをされる方もおられるようです。
健康な眼に、リスクのあるレーシックは受けないほうがいいと思います・・・・。

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