糖尿病性腎症の血液検査 クレアチニン 尿素窒素

糖尿病の3大合併症(網膜症、腎症、神経障害)のひとつである糖尿病性腎症の血液検査について紹介します。

糖尿病性腎症の検査として代表的な検査は、血液検査の血清クレアチニン、尿素窒素(BUN)、尿検査のクレアチニンクリアランス、尿中微量アルブミンなどがあります。今回は、これらのうちの血液検査である、血清クレアチニンと尿素窒素(BUN)について詳しく見ていきましょう。

※糖尿病性腎症については、本HP糖尿病と合併症-2.腎症および糖尿病性腎症を知る!- 第1回 糖尿病性腎症とは?を参照ください。

 

 

1.  糖尿病性腎症の血液検査-血清クレアチニン

糖尿病性腎症の検査として代表的な検査は、血液検査の血清クレアチニン、尿素窒素(BUN)、尿検査のクレアチニンクリアランス、尿中微量アルブミンなどがあります。今回は、これらのうちの血液検査である、血清クレアチニンと尿素窒素(BUN)について詳しく見ていきましょう。

※糖尿病性腎症については、本HP糖尿病と合併症-2.腎症および糖尿病性腎症を知る!- 第1回 糖尿病性腎症とは?を参照ください。

血清クレアチニン

筋肉の細胞には、クレアチンリン酸というエネルギー貯蔵物質が多く存在しています。アミノ酸の一種であるクレアチンがリン酸化されたもので、肝臓で合成されて血液によって筋肉へ運ばれます。

血清クレアチニンとは、このクレアチンやクレアチンリン酸が、筋肉収縮のエネルギー源として代謝されたとき(燃やされたとき)血液中にできる物質です。この血清クレアチニンは、腎臓ではほとんど再吸収されず、尿中に排泄されます。

ところが糖尿病性腎症の場合、腎機能が低下しているためにクレアチニンの尿中への排泄が悪くなり、血清クレアチニンが上昇します。ただし、糖尿病の初期においては、腎機能はまだ低下しておらず、高血糖の影響によりクレアチニンの尿中排泄はむしろ多くなるため、血清クレアチニンは低下します。

血清クレアチニンは筋肉量に比例するため、筋肉量に変化がなく腎機能が安定していればほぼ一定の値となります。また筋肉量の違いから、男性のほうが女性より高値です。

 

 

 

 

2. 糖尿病性腎症の血液検査-尿素窒素

 

体内で過剰に摂取したアミノ酸が分解されるときにアンモニアという有害物質ができます。尿素窒素は、有害物質アンモニアを肝臓で無害な尿素に変えるときにできる物質です。臨床検査では、この尿素のことを尿素窒素と言い表しています。

血液中の尿素窒素は、腎臓で35~70%が再吸収され、残りが尿中に排泄されます。ところが糖尿病性腎症の場合は、腎機能が低下しているために尿素窒素の尿中への排泄が悪くなり、血中の尿素窒素の数値が上昇します。


尿素窒素は、血清クレアチニンに比べて腎臓以外の因子(腎外性因子)による影響を受けやすいため、尿素窒素が高値というだけでそれが腎機能の低下によるものだと断定はできません。

そこで、尿素窒素の上昇の要因が腎機能低下によるものであるかどうかを、BUN / Cr(尿素窒素・クレアチニン比)を求めて調べる場合があります。BUN/Crとは、尿素窒素の数値を比較的変動の少ない血清クレアチニンの数値で割った値です。
この数値が10以上であれば、脱水、心不全、出血、食事中のタンパク質の摂りすぎなどの腎外性因子による可能性が高いと考えられます。

今回は血液検査である血清クレアチニン、尿素窒素(BUN)について見てみましたが、次回は尿検査であるクレアチニンクリアランス、尿中微量アルブミンについて詳しく見ていきたいと思います。

 

 

 

著者プロフィール:堀 行雄(臨床検査技師)
2000年インクロムの提携医療機関に入職して以来、臨床検査室で忙しく検体検査をする日々。年間およそ5000人分の血液を分析。