電解質異常(総論)の基礎知識

電解質異常(総論)の基礎知識

電解質異常(総論)とは?

 

電解質異常(総論)に関連する治療薬

カリウム製剤

  • 体内にカリウムを補充しカリウムが不足することでおこる脱力感や吐き気などの症状を改善する薬
    • 低カリウム血症は血液中のカリウム濃度が低下した状態で筋肉症状、消化器症状などがあらわれる
    • カリウムは筋肉や神経などの働きに関わる
    • 本剤はカリウムを含む製剤であり体内にカリウムを補充する
  • 利尿薬などの薬剤を使用中に起こりうるカリウム不足に対して使用される場合もある
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陽イオン交換樹脂製剤(血清カリウム抑制剤)

  • 腸管内で薬剤のもつ陽イオンをカリウムイオンと交換しカリウムイオンを排泄させて血液中のカリウム値を下げる薬
    • 慢性腎不全では腎機能低下により血液中のカリウム値が高くなりやすくなる
    • 血液中のカリウム値が高いままだと高カリウム血症がおこりやすくなる
    • 本剤は腸管内でカリウムイオンを本剤のもつ陽イオンと交換し、体外へ排泄させる樹脂製剤
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カルシウム製剤

  • 体内にカルシウムを補充し、骨粗しょう症、高リン血症、消化器症状などを改善する薬
    • カルシウムは体内で骨を強くする作用、リンを体外へ排泄する作用、胃酸に対する制酸作用などをあらわす
    • 本剤はカルシウムを含有する製剤で、製剤毎の特徴などによって色々な疾患・症状に使用する
  • 本剤は主に有機酸系カルシウム製剤と無機系カルシウム製剤に分かれる
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インスリン製剤

  • インスリンを体内に投与することで、血糖値を下げ糖尿病による合併症を防ぐ薬
    • 糖尿病は血糖値が高い状態で、この状態が続くと様々な合併症を引き起こす
    • インスリンは血糖を下げるホルモン
  • インスリン製剤はインスリンアナログ製剤とヒトインスリン製剤に分かれる
  • インスリン製剤は作用発現時間や作用持続時間などにより以下の種類に分かれる
    • 超速効型:作用発現時間が10〜20分、作用持続時間は3〜5時間で「食直前に投与」
    • 速効型:作用発現時間は30分〜1時間、作用持続時間は5〜8時間で「食前30分に投与」
    • 持効型:作用持続時間は約24時間又はそれ以上で、継続使用時に明らかなピークが見られないため、中間型に比べてよりスムーズに基礎分泌を補いやすいメリットが考えられる
    • 中間型:作用発現時間は30分〜3時間、作用持続時間は18〜24時間(同じ中間型でも製剤によっては作用持続時間に開きがある場合もある)
    • 混合型:超速効型又は速効型に、一定量の添加物を加えたり中間型を組み合わせた製剤(超速効型又は速効型の配合割合が複数存在する)
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電解質異常(総論)の経過と病院探しのポイント

この病気かなと感じている方

電解質異常とは一つの病気の名前ではなく、高ナトリウム血症低ナトリウム血症、またナトリウムではなくカリウムやカルシウムといった電解質ミネラル)の過不足を指した言葉です。それぞれで治療法が変わってきます。

上記のような症状に該当してご心配な方は内科の総合病院の内科での受診をお勧めします。その際には、どういう状況なのか(健康診断で電解質異常が判明したのか、何らかの症状があって電解質異常ではないかと自分で考えているのかなど)を正しく伝える必要があります。

電解質異常そのものを治療するだけでなくその原因となった病気を治療しなければなりませんので、腎臓の病気であれば腎臓内科、副腎の病気ならば内分泌代謝科など、原因が判明次第、実際には各科が担当になることがほとんどです。

電解質異常の診断は血液検査で行います。その上で、追加で行う検査としては様々ですが、尿検査、心電図頭部CT腹部CT腹部エコーなどのうちいくつかが必要となることが多いです。これらの検査が行える、総合病院の内科を受診することをお勧めします。

 

この病気でお困りの方

軽症であれば内服薬で様子を見ながら通院で治療することもありますし、重症の場合には意識障害やけいれん、心臓発作などの症状が出ますので入院となります。

電解質異常の原因によっては手術が必要となったり、特別なホルモンの検査が必要となったりします。これは比較的まれなパターンではありますが、そのようなケースでは手術が行える施設を備えた病院や経験の豊富な大学病院を紹介受診(または入院中の転院)することがあります。詳しくはそれぞれの電解質異常のページもご参考になさってください。

高カリウム血症の基礎知識

基礎知識

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高カリウム血症の基礎知識

高カリウム血症とは?

  • 血中のミネラルの一つであるカリウムの濃度が高くなった状態
    • 突然の心停止などにつながり得る危険な状態である
  • カリウムの主な役割
    • 細胞内の浸透圧の調整
    • 筋肉の収縮
    • 神経の働きを保つ
  • 食事から多くのカリウムを摂取しても、通常は腎臓の働きによって尿にカリウムが排泄される
    • 腎臓の働きが低下するとカリウムが溜まり、高カリウム血症になりやすくなる
    • 腎臓が正常なら、食事の偏りが原因で高カリウム血症になることはない
  • 薬の副作用も原因のひとつ
  • 血中のカリウム濃度が高くなってしまう原因
    • カリウムの排出機能の低下
      腎不全
      ・薬剤
    • 副腎の病気による、アルドステロンの分泌低下
      アジソン病など
    • 偽性低アルドステロン症
    • 尿細管アシドーシス
      糖尿病
      全身性エリテマトーデスSLE
      シェーグレン症候群
      ・移植腎
      ・間質性腎障害
    • 細胞内から血液中へのカリウムの移動
      ・高浸透圧血症
      高血糖
      ・アシドーシス
      ・飢餓(インスリン不足)
      ・溶血、内出血、横紋筋融解症クラッシュ症候群などの細胞破壊
    • カリウムを大量に含む薬剤:カリウム製剤(商品名アスパラ、アスパラカリウム)など
    • 高カロリー輸液、経管栄養
    • 保存赤血球
  • 高カリウム血症の原因になる薬剤
    • NSAIDs:ロキソプロフェン(商品名ロキソニン)、ジクロフェナク(商品名ボルタレン)など
    • ACE阻害薬:テモカプリル(商品名エースコール)、イミダプリル(商品名タナトリル)、エナラプリル(商品名レニベース)など
    • ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬):ロサルタン(商品名ニューロタン)、カンデサルタン(商品名ブロプレス)、テルミサルタン(商品名ミカルディス)、オルメサルタン(商品名オルメテック)、イルベサルタン(商品名アバプロ、イルベタン)、アジルサルタン(商品名アジルバ)など
    • 免疫抑制薬:シクロスポリン(商品名ネオーラル、サンディミュン)、タクロリムス(商品名プログラフ)など
    • 抗菌薬:ST合剤(商品名バクタ)、ペンタミジン(商品名ベナンバックス)など
    • タンパク質分解酵素阻害薬:ナファモスタット(商品名フサン)
    • 抗アルドステロン薬:スピロノラクトン(商品名アルダクトン)、エプレレノン(商品名セララ)など
    • カリウム保持性利尿薬:トリアムテレン(商品名トリテレン)、アミロライドなど
    • ヘパリン
    • ペニシリンG
    • β遮断薬、ジギタリス、アミノ酸製剤、サクシニルコリン
  • 慢性腎臓病や糖尿病腎症の治療に使われる降圧薬のレニン・アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬、ARB)は高カリウム血症の原因になりうる
  • 採血の失敗(溶血)で検査上高カリウム血症のように見える場合がある

症状

  • 主な症状
    • 筋力の低下(脱力感)
    • 不整脈
    • 吐き気、嘔吐
    • しびれ、感覚障害 など

検査・診断

  • 血液検査
    • 腎機能や血液中のカリウム濃度を調べる
  • 心電図
    • カリウムによる心臓への影響を確認する
  • 心電図にはカリウム濃度に応じて特徴ある波形が現れる
    • K>5.5mEq/lでQT短縮、幅が狭く左右対称なT波増高(テント状T波)
    • K>6.5mEq/lで接合部調律、ST上昇、P波消失
    • K>7.0mEq/lでQRS幅拡大、PR間隔延長(徐脈)、正弦波(サインカーブ)、洞停止、心室細動
    • II、III、V2誘導でよく特徴が現れる
  • 高カリウム血症による不整脈の種類
    • 心室細動
    • 洞停止
    • 右脚ブロック
    • 左脚ブロック
    • 2枝ブロック
    • 心室細動は心停止に至り、突然死の原因となりやすい

治療

  • 治療の目的
    • 血液中のカリウム濃度を低下させる
    • 不整脈の出現を予防する
  • 薬物療法
    • 補液、輸液
    • 陽イオン交換樹脂製剤:カリウムの体内への吸収を抑える
      ・ポリスチレンスルホン酸カルシウム(商品名カリメート)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(商品名ケイキサレート)など
    • 利尿薬:カリウムの尿中への排泄を促進する
    • 重炭酸ナトリウム(重曹):血液中のカリウムを血液の外へ移動させて、一時的にカリウムの濃度を低下させる
    • ブドウ糖インスリンの併用(グルコース・インスリン療法):血液中のカリウムを細胞内へ移動させて、一時的にカリウムの濃度を低下させる
    • β2アゴニスト:カリウムの細胞内への移動を促す
    • カルシウム製剤:カリウムの心臓に対する影響を出にくくする
    • 鉱質コルチコイド製剤(商品名:フロリネフ):カリウムの尿中への排泄を促進する
  • 血液透析(緊急性の高い場合)
    • 薬物療法のみで早期改善が見込めない場合や、心臓への影響のため直ちに薬物療法以外の治療が必要な場合には、血液透析を行う
    • 血管に太めの管(カテーテル)を入れて、血液中のカリウムを直接洗い流す
  • 食事療法
    • 急な対応が不要な場合には、カリウムを多く含む食品を制限する
      ・海藻類(昆布、ひじき、わかめ、海苔)、キノコ(マイタケ、シイタケ、きくらげ)、豆類(大豆、インゲンマメ、小豆)、バナナ、牛乳、杏子、鮭など
    • カリウム摂取量は1日あたり1500mg以下を目安とする
    • 慢性腎臓病による場合ではタンパク質制限、塩分制限が同時に必要になる
    • 糖尿病腎症による場合はさらに複雑になる

高カリウム血症に関連する治療薬

陽イオン交換樹脂製剤(血清カリウム抑制剤)

  • 腸管内で薬剤のもつ陽イオンをカリウムイオンと交換しカリウムイオンを排泄させて血液中のカリウム値を下げる薬
    • 慢性腎不全では腎機能低下により血液中のカリウム値が高くなりやすくなる
    • 血液中のカリウム値が高いままだと高カリウム血症がおこりやすくなる
    • 本剤は腸管内でカリウムイオンを本剤のもつ陽イオンと交換し、体外へ排泄させる樹脂製剤
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カルシウム製剤

  • 体内にカルシウムを補充し、骨粗しょう症、高リン血症、消化器症状などを改善する薬
    • カルシウムは体内で骨を強くする作用、リンを体外へ排泄する作用、胃酸に対する制酸作用などをあらわす
    • 本剤はカルシウムを含有する製剤で、製剤毎の特徴などによって色々な疾患・症状に使用する
  • 本剤は主に有機酸系カルシウム製剤と無機系カルシウム製剤に分かれる
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インスリン製剤

  • インスリンを体内に投与することで、血糖値を下げ糖尿病による合併症を防ぐ薬
    • 糖尿病は血糖値が高い状態で、この状態が続くと様々な合併症を引き起こす
    • インスリンは血糖を下げるホルモン
  • インスリン製剤はインスリンアナログ製剤とヒトインスリン製剤に分かれる
  • インスリン製剤は作用発現時間や作用持続時間などにより以下の種類に分かれる
    • 超速効型:作用発現時間が10〜20分、作用持続時間は3〜5時間で「食直前に投与」
    • 速効型:作用発現時間は30分〜1時間、作用持続時間は5〜8時間で「食前30分に投与」
    • 持効型:作用持続時間は約24時間又はそれ以上で、継続使用時に明らかなピークが見られないため、中間型に比べてよりスムーズに基礎分泌を補いやすいメリットが考えられる
    • 中間型:作用発現時間は30分〜3時間、作用持続時間は18〜24時間(同じ中間型でも製剤によっては作用持続時間に開きがある場合もある)
    • 混合型:超速効型又は速効型に、一定量の添加物を加えたり中間型を組み合わせた製剤(超速効型又は速効型の配合割合が複数存在する)
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高カリウム血症の経過と病院探しのポイント

この病気かなと感じている方

高カリウム血症では、胸の動悸や吐き気といった症状が出現します。通常高カリウム血症になる原因として腎不全横紋筋融解症など何らかの別の病気がありますので、高カリウム血症だけが突然起きるという心配はありません。

高カリウム血症の診断そのものは、血液検査が行える医療機関であればどこでも可能です。しかし、実際に高カリウム血症と診断されたときの治療まで考えると、総合病院の救急科、もしくは内科の受診が望ましいでしょう。また、高カリウム血症によって不整脈が出ることがあるため、心電図の検査も合わせて行われます。

高カリウム血症は、血液検査の結果で診断します。カリウムの血中濃度は通常3.5-5.0mEq/l程度ですが、この範囲を越えて更に6-7mEq/l以上になると症状が出始めます。自己診断は難しい病気ですので、何らかの理由で高カリウム血症が心配な方は、まず病院を受診して血液検査を受けることをお勧めします。

この病気でお困りの方

高カリウム血症の治療には、様々な点滴や吸入薬があります。高カリウム血症が悪化すると突然死の原因になり得ますので、重症の場合には緊急の治療が必要です。

このような治療を行うのは、救急科、または内科全般が専門の診療科です。どちらかと言えば重症の場合は救急科、そうでない場合は内科が担当することになります。突然の高カリウム血症ではなく、週単位や月単位で軽度の高カリウム血症が持続しているような場合には、内科で対応することになるでしょう。高カリウム血症が起きている原因が何かしらあるはずですから、高カリウム血症の治療というよりも、その原因の治療が重要となります。

高カリウム血症の原因として多いのは腎臓の異常で、その場合は腎臓専門医が診療を行います。重症であれば、血液透析といって献血のように体外に一度血液を取り出して、そこから余分なカリウムだけをフィルターで除去し、残りの血液を体内に戻すといった処置を行います。このような特別な治療が必要になる可能性を考えると、数日間で生じたような急激な高カリウム血症の場合にはクリニックではなく地域の中核病院での治療が必要です。

糖尿病で壊疽(えそ)に至る場合も。糖尿病足病変を防ぐために気をつけたいこと

日本フットケア学会の2013年2月の発表によると、糖尿病患者の急増や高齢化社会にともない、足病変が増加しています。
糖尿病患者さんのうち0.7%が壊疽(えそ)を発症していて、重症になると下肢の切断につながり、命にかかわることもあります。

ここでは、糖尿病と壊疽の関係について、また、予防法についてご紹介します。

壊疽(えそ)の症状とは

事故や病気などの要因によって身体の一部への血流が遮断されると、その部位を組織している細胞が死滅し、「壊死(えし)」を起こします。その壊死部分が腐敗した状態を「壊疽(えそ)」といいます。
壊疽は症状の進行が早く、早期の治療が必要です。
壊疽が悪化した場合、切断を余儀なくされる場合もあり、最悪、敗血症によって命を落とす危険性もあります。
厚生労働省の「平成19年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病から壊疽を起こす人は糖尿病総患者の0.7%と、頻度はそう高くはありません。
糖尿病が要因となって発症する「糖尿病足病変」は、長期間に渡って血糖の高い状態が続いた結果生じます。
適切な治療を行い、血糖コントロールが出来ていれば、「壊疽」を起こす可能性は低くなりますので、予防法をしっかりと把握して、日々のケアを行いましょう。

糖尿病から壊疽に至る3つの要因

そもそも、なぜ糖尿病足病変は起こるのでしょうか。糖尿病足病変は、高血糖の状態が長期間続くことによって生じる、様々な合併症が重なって生じます。
壊疽の原因となる3つの合併症について詳しく説明しましょう。
①抹消神経障害
壊疽を発症する要因の1つは、足や手などの「末梢神経障害」です。
神経に栄養を供給する細い血管の血行が高血糖によって悪くなり、神経が部分的に死滅して「足のしびれ」「足がつる」「こむら返り」などの症状が出ます。手にも同じ様な症状が現れるケースもありますが、通常は足に比べて軽度です。
症状は、突然起こるものではなく、徐々に進行して感覚が麻痺します。そのため、症状を感じることができなくなり、改善したのか進行しているのか、見分けが付きにくいという特徴があります。
症状が悪化すると感覚が麻痺し、足に「靴ずれ」や「たこ」、「イボ」などができていることに気づかずに手当てが遅れてしまい、壊疽を起こす原因となります。
②動脈硬化による血行障害
動脈硬化によって血行障害となり、壊死を起こしやすいことも要因となります。
動脈硬化になると、手や足の血管が狭くなって血管が詰まるため、血液の流れが悪くなります。これにより手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなるため、「冷え」や「しびれ」「傷が化膿しやすい」といった症状が現れます。
更に悪化すると、大きな血管が慢性的に閉塞してしまう閉塞性動脈硬化症を発症し、主に下半身の脚の部分の血流が遮断されて足の先端から細胞が壊死し、感染による壊疽を起こす危険性もあります。
糖尿病の場合は、高血糖のため動脈硬化の進行が速く、症状が重症化しやすいのが特徴です。
➂免疫力の低下
糖尿病では健常者よりも感染症にかかりやすく、悪化しやすい傾向にあります。これは、血糖が高いために、ウィルスや菌を食い殺す白血球内の好中球の機能が十分に働かず、一度感染した病原体の抗体を作り出す「免疫機能」が低下してしまうためです。そのため、小さな傷でも治りにくかったり、感染を起こしやすく、悪化しやすかったりするのです。
これらの合併症が重なることで、壊疽を起こしやすくなります。
壊疽が起こるのは、ほとんどが足先です。足先は神経の司令をだす脳や、血液を循環させている心臓から最も遠くにあるため、神経障害や血行障害が起こりやすいのがその理由の1つです。また、足の裏など、見つけにくいところの小さな傷やイボ、たこの痛みに気づかず、抵抗力も低下しているために傷が悪化しやすい、ということも理由として挙げられます。

日頃のフットケアで壊疽の予防を

壊疽の一番の予防策は、正しい治療により血糖をコントロールすることです。血糖を抑えることで、壊疽の原因となる合併症を防ぐ事が肝心です。
また、糖尿病による壊疽は足先に出やすいので、日々のフットケアも「壊疽」予防に有効です。フットケアの基本は、せっけんなどの洗浄剤で足をきれいに洗うこと、乾燥しひび割れを起こさないように保湿剤を使用する、足に傷やたこイボなどの皮膚症状がないかチェックすることが有効です。また、足のケガには十分に気をつけましょう。靴ずれや巻爪、深爪も同様です。傷に気づいたら、小さな傷でもかかりつけの病院へ受診し、適切な治療を受ける事をおすすめします。

ケトン体って危険なの?

 今回は、糖質制限食とは切っても切れない関係のある「ケトン体」についてのよくある誤解について述べたいと思います。そもそもケトン体とは、一般社会ではほとんど耳慣れない言葉です。そして医学界においては、ほとんどの医師が「ケトン体は人体において悪者である」という大きな誤解、先入観を持っています。本当にそれは正しいのでしょうか。

ケトン体とは、空腹時や睡眠時などに脂肪酸が燃焼する時、肝臓で作られる物質のことで、心筋、骨格筋など人体の多くの組織のエネルギー源となります。医学・生化学の世界においては、「β−ヒドロキシ酪酸」「アセト酢酸」「アセトン」−−の3者を、ケトン体と総称してきました。人体で日常的にエネルギー源として利用されている主たるものは、この3者のうちβ−ヒドロキシ酪酸です。アセトンはエネルギー源として利用されません。

ケトン体はすべての人に日常的なエネルギー源

血液検査でケトン体を調べようとすると、「β−ヒドロキシ酪酸濃度+アセト酢酸濃度=総ケトン体濃度」として、データが出てきます。糖質を普通に食べている人の、血中総ケトン体の基準値は、「26〜122μmol/L」くらいになります。糖質を食べている人でも、日常的に24時間、血中ケトン体は存在しているわけです。

糖質摂取開始後2時間までは、心筋や骨格筋の主たるエネルギー源は食事由来のブドウ糖ですが、糖質摂取開始後4〜5時間くらい経過した空腹時には、心筋や骨格筋の主たるエネルギー源は「脂肪酸が燃焼してできるケトン体」に切り替わっていきます。

つまり糖質を摂取している人でも、夜間睡眠時とか、日中でも空腹時は、心筋や骨格筋の主たるエネルギー源は、実はブドウ糖ではなく「脂肪酸−ケトン体」なのです。夜間睡眠時や空腹時などにもブドウ糖をエネルギー源としているのは、赤血球、脳、網膜など特殊な細胞だけです。つまり、ケトン体はすべての人類において、ごく日常的なエネルギー源として利用されています。この生理学的事実を多くの医師、栄養士がご存じないのは大変困ったもので、医療現場で混乱のもととなっています。

生理的ケトン体上昇は安全

スーパー糖質制限食実践者の場合は、食事中にも「脂肪酸−ケトン体」がエネルギー源として利用されています。つまりステーキを食べている最中にも、脂肪は分解されて燃えているわけです。血中ケトン体濃度は、現行の基準値よりはるかに高値(200〜1200μmol/L)となりますが、単に生理的な反応です。ケトン体のアセト酢酸とβヒドロキシ酪酸は酸性が強いので、ケトン体が血中に多くなると血液や体液が酸性に傾きそうになりますが、健康な人であれば、血液の緩衝作用や呼吸、腎臓の調節作用によって正常な状態を保ちます。前回記事にした「ケトン食」だと血中ケトン体は4000〜5000μmol/Lとなります。

人類700万年間の狩猟・採集時代は糖質制限食でした。私たちのご先祖は、日常生活の多くの場面で同様に「脂肪酸−ケトン体」をエネルギー源としていたと考えられます。このことは、備蓄エネルギーとしてみると、体脂肪が10kgあれば9万kcalとたっぷりあるのに対して、肝臓や筋肉に蓄えられるブドウ糖(グリコーゲンに変換)の量には限界があり、一般的な蓄積量250gではわずか1000kcalしかないことからも推察されます。

すなわち人類において身体の多くの細胞の主たるエネルギーシステムは「脂肪酸−ケトン体」で、「ブドウ糖−グリコーゲン」は、闘争、逃走などで激しく筋肉を収縮する緊急事態や、運良く糖質を摂取できたときだけの予備のシステムであったと考えられるのです。

糖尿病ケトアシドーシスは危険

一方、糖尿病でインスリン作用が欠落している時に血中ケトン体濃度が高くなる「糖尿病ケトアシドーシス」は、重篤な病態で危険です。血糖値が300〜500mg/dL以上もあり、口渇・多飲・多尿・腹痛・悪心・嘔吐(おうと)・脱水・意識レベル低下、尿中ケトン体が強陽性−−などの症状があれば、糖尿病ケトアシドーシスと診断できます。生理的食塩水の点滴や、速効型インスリンの静脈注射など緊急的な治療が必要となります。

糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度な代謝失調です。強調しますが、インスリン作用の欠乏がすべての出発点ですから、それがなければ起こらない病態です。インスリンが不足した状態では、糖利用の低下、脂肪の代謝が進み、血中にケトン体が蓄積します。つまり、インスリンが欠乏した結果として、ケトン体が高くなるわけです。ケトン体の高値は、始まりではなくて、あくまでも結果なのです。

先ほど、ケトン体が血中に多くなると血液や体液が酸性に傾きそうになるが、健康な人であれば、正常な状態を保つと言いました。しかし糖尿病ケトアシドーシスの状態では、代謝が破綻していて脱水が生じ、この緩衝作用もうまく働かず、ひどくなると意識障害を来し、治療しなければ死に至ります。糖尿病ケトアシドーシスは、実際には、1型糖尿病患者さんが糖尿病以外の病気にかかった時や、インスリン注射を中断した時に起こることがほとんどです。

「生理的なケトン体濃度の上昇」と「糖尿病ケトアシドーシス」は全く異なる

すなわち、インスリン作用がある限り、血中ケトン体濃度が現行基準値より高値でも、糖尿病ケトアシドーシスにはなりません。言い換えると、インスリン作用が欠乏していない限り、「糖尿病ケトアシドーシス」は生じないのです。このように、「生理的なケトン体濃度の上昇」と「糖尿病ケトアシドーシス」は、全く異なる状態であることを知る必要があります。

次回は、胎盤と新生児のケトン体値について説明したいと思います。

糖質制限食の基本を知る

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江部康二

江部康二

高雄病院理事長

えべ・こうじ 1950年生まれ。京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所(現京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)などを経て、78年より医局長として一般財団法人高雄病院(京都市)に勤務。2000年理事長に就任。内科医、漢方医。糖尿病治療の研究に取り組み、「糖質制限食」の体系を確立したパイオニア。自身も02年に糖尿病であることが発覚し、実践して糖尿病と肥満を克服する。これまで高雄病院などで3000人を超える症例を通じて、糖尿病や肥満、生活習慣病、アレルギーなどに対する糖質制限食の画期的な治療効果を証明し、数々のベストセラーを上梓している。

ケトン体尿検査の定性判定一覧表 – 検査ぶっく

◆ケトン体尿検査のまとめ♪(もくじ)

◆ケトン体とは?

ケトン体と言う言葉を日常生活で耳にすることはあまり無いかもしれません。

「ではこの成分はいったい何者なのでしょうか?」

まずケトン体と呼ばれる成分の正体について一から確認してみましょう。

医学的には以下の総称がケトン体として位置づけられております。

ケトン体とは?
●アセトン
●アセト酢酸
●β-ヒドロキシ酪酸

 ケトン体は肝臓内で生成された脂肪酸から合成された成分です。

※ケトン体とは「アセトン」「アセト酢酸」「β-ヒドロキシ酪酸」の総称である。

 しかし、このような説明では正直わかり辛いですね。

ケトン体尿検査を実施する場合は、ケトン体がどのような働きを持ち、人体にどのような影響を与え、またこの検査がどのような目的で実施され、るのかについて把握しておきたいものです。

では、ここからはケトン体は人体にとってどのような役割を持っているのか?どのように働きかける成分であるのか?についてひとつずつチェックしていきましょう。

◆随意筋・不随意筋のエネルギー源としての役割

ケトン体の役割について見てきましょう。

ケトン体の主な役割は生命の維持に欠かせない心臓や腎臓などの各種臓器のエネルギー源としての働きです。

心筋や肺の呼吸に関与する横隔膜などの筋肉は私たちが普段意識することなく活動している筋肉ですね。

このように意識をせずとも活動を継続し続ける筋肉を「不随意筋」と呼びます。

※不随意筋=無意識下においても活動する筋肉

 人体の活動における主なエネルギー源はグルコース(ブドウ糖)と呼ばれる糖分です。

ケトン体はこのグルコースが何らかの障害や疾患で生成されなくなってくると、その代用エネルギー源として誕生します。

もしエネルギー源が完全に途絶えると活動が低下、もしくは停止する為、ケトン体は無くてはならない成分です。

また、ケトン体の役割は不随意筋だけでなく骨格筋などの随意筋のエネルギー源としての役割ももっております。

随意筋とは、意識して作動させる筋肉のことです。

※随意筋=意識下において活動する筋肉

 腕の力こぶを作ろうとすると上腕を曲げますね。

この上腕の筋肉のように意識して動かす筋肉を随意筋と呼びますが、これらの筋肉のエネルギー源としてもケトン体は活躍します。

こうして見ると全ての生命活動において重要な役割を持っている事がわかりますね。

◆肝臓で生成される脂肪酸

ケトン体が生成されるメカニズムについて見ていきましょう。

ケトン体は主に
●体内の糖分(ブドウ糖)の不足
●糖代謝の異常
など血糖コントロールが正常に機能していない時に生成されます。

血糖を表す指標である血糖値の値が異常に低い数値を示すケースではエネルギー源としての糖分が不足します。

この時、肝臓では脂肪を分解し脂肪酸が生成されこの脂肪酸をエネルギー源として使用します。

この脂肪酸は一定量を超えてくると分解され新たに「アセトン」「アセト酢酸」「β-ヒドロキシ酪酸」を生み出します。

これらの成分がケトン体の正体です。

ケトン体は血液中濃度が一定量以上になると尿中のケトン体量も増加します。

※ケトン体=脂肪酸から合成されるエネルギー源

◆尿中ケトン体濃度を測定し指標とする

ケトン体尿検査が行われるケースについて見ていきましょう。

ケトン体尿検査は、主に
●糖尿病
●甲状腺機能亢進症
などの血糖コントロールの機能不全に関する疾患の可能性を確認する際にケトン体尿検査が実施されます。

前項でも解説したとおり体内のエネルギー源となる糖分が不足すると体内ではブドウ糖に変わるエネルギー源を作り出す必要があります。

この際に生み出されるエネルギーの源は肝臓で生成される脂肪酸でしたね。

脂肪酸はケトン体を合成し合成後は血液中に放出します。

血液中に放出されたケトン体は、心臓や腎臓の他、筋肉や臓器に運搬され使用後は腎臓を通じて体外へ排泄されます。

この働きを踏まえて尿中に存在するケトン体濃度を測定しケトン体量が増えすぎていないか?をチェックし血糖がコントロールできているかどうかの指標として利用しているのです。

◆糖尿病ではエネルギー源を見極める

糖尿病患者、特に糖尿病の重症患者の場合は「インスリン」の生成が体内で出来なくなります。

インスリンの生成ができなくなってしまうと体内ではブドウ糖をエネルギー源として使用することができなくなります。

その為、糖尿病患者の場合は、エネルギー源を補う為に肝臓で大量の脂肪酸が生成されます。

脂肪酸が増えるとケトン体の量も比例して増加するため糖尿病の場合は脂肪酸がエネルギー源の主力として使用されているかどうかを確認します。

もしケトン体尿検査の結果が陽性反応であれば、糖分が不足している証ですね。

糖尿病患者がケトン体検査を行う場合の目的はこのようなエネルギー源の生成という観点からチェックを行うケースです。

※インスリンが生成できない場合ケトン体数値は高くなる

◆ケトーシスとケトアシドーシス

体内の脂肪酸量が増加し、ケトン体の絶対量も増加してきた場合。

このようにケトン体が正常値を超えて上昇してくる状態をケトーシス(ケトン症)と呼びます。

ケトーシスはエネルギー代謝の影響を受ける為、様々な疾患の症状として発症する可能性のある症状のひとつです。

尚、アセトンはケトン体のひとつですが、エネルギー源として使用されることがない成分です。

またアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸はどちらも血液を酸性に導く成分であり、この2つの成分が増加することをケトアシドーシスと呼びます。

~ポイントのまとめ~
★ケトン体は血糖のコントロール指標となる
★インスリンが生成できない場合ケトン体数値は高くなる
★ケトン体が増加した状態をケトーシスと呼ぶ

◆検査結果は陽性か陰性で示す

ケトン体尿検査の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。

以下に掲載する表は、ケトン体尿検査の基準指標です。

仮に定性反応が見られない場合であっても、糖尿病などの疾患の可能性や危険性がないという訳ではもちろんありません。

尚、ケトン体尿検査では、「尿中」のケトン体含有量を測定します。

◆ケトン体尿検査の定性判定一覧表

これから検査を初めて受ける方の場合。

陰性であればOK!陽性なら問題あり!

とシンプルに覚えておけば良いでしょう。

ケトン体尿検査では、ケトン体含有量を試験紙を用いて測定します。

【ケトン体尿検査の定性判定一覧表】
範囲 定性
上昇が認められる場合の定性 陽性(+)
基準値の範囲内の場合の定性 陰性(-)

◆脱水症状は要注意!体調管理をしよう

ケトン体尿検査では、その日の体調によって検査結果が変わってしまうこともあります。

最も多いケースとしては風邪などによって発熱を起こし脱水症状を起こしているケース。

脱水症状を起こしていると体内の血液成分濃度が濃くなる為、血液中のケトン体濃度も上昇します。

その結果、尿中のケトン体も比例して高くなり陽性反応が出てしまうケースがあるのです。

脱水症状を発症している場合では正しい定性を示すことができません。

検査当日に体調が悪い場合は後日へ変更してもらう。

突然検査を実施することに成った場合は、医師に自分の体調を前もって伝えておくことが大切ですね。

※脱水症状を起こしている場合の検査結果は信憑性が低い

話題のケトン体ダイエットと糖質制限ダイエットは何がちがう?

糖質制限ダイエットの基礎知識と方法

効果が高いと話題のケトン体ダイエット。ケトン体とは体脂肪が燃えているときに合成される物質です。ケトン体ダイエットのメカニズムはどのようなもので、糖質制限ダイエットとの違いは何か、ドクター監修の記事で解説します。

話題のケトン体ダイエットと糖質制限ダイエットは何がちがう?

糖質制限ダイエットに近しいものとして、ケトン体ダイエットというものがあります。その概要やメカニズム、糖質制限ダイエットとの違いについて解説します。

ケトン体ダイエットとは

体内でエネルギー源となるブドウ糖が不足すると、身体は脂肪を燃焼させてエネルギーとして使うようになります。このときに肝臓で作られるのが「ケトン体」。ケトン体は、アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸という、3つの物質の総称です。通常、私たちの脳は、エネルギー源としてブドウ糖しか利用できないとされています。しかし、ケトン体は、ブドウ糖の代わりに脳のエネルギーとして使えるといわれているのです。脳以外にも、さまざまな臓器のエネルギー源になるともいわれています。

ケトン体ダイエットでは、糖質を極端に制限し、血液中のケトン体を増やして、標準的な値を超えた「ケトーシス」と呼ばれる状態を作ります。この状態では脂肪が分解され、主なエネルギー源としてケトン体が使われるため、ダイエット効果が期待できるのです。また、「ケトーシス」になると空腹を感じにくくなるともいわれています。

具体的な方法としては、ダイエット開始から2週間ほどの間、炭水化物の摂取量を摂取カロリーの5%にまで抑えます。たとえば、1日の摂取カロリーが2,000カロリーの人なら100カロリー以内、1,600カロリーの人なら80カロリー以内、といった具合です。

こうした厳しい制限で「ケトーシス」の状態を作り、開始2週間後からは徐々に炭水化物の摂取量を増やしていきます。ただし、増やすといっても、摂取カロリーの20%以内に抑えます。

効果が非常に高いといわれていますが、思わぬ副作用が出ることもあります。

まず、ケトーシスになるまでは、炭水化物の摂取を厳しく制限しますので、体がだるくなったり、頭がぼーっとしたりすることがあります。また、ケトン体濃度が高くなると、身体がケトン体を体外へ排出しようとして、脱水症状を起こすことがあります。さらに、ケトン体のアセトンが原因で、口臭や体臭が甘酸っぱい匂い、いわゆるダイエット臭になることもあります。

さらに、酸性のケトン体が増えすぎると、血液や体液が酸性になる「ケトアシドーシス」を起こす可能性もあります。健康な方であればケトアシドーシスの心配はほぼありませんが、インスリンが体内で正常に機能していない1型糖尿病患者の場合は注意が必要です。糖尿病性ケトアシドーシスを発症すると、嘔吐や腹痛、脱水症状などを引き起こし、進行すると意識障害や昏睡を起こして死にいたる可能性もあります。

糖質制限ダイエットとケトン体ダイエットの違い

糖質の摂取量を制限するという意味では、ケトン体ダイエットと糖質制限ダイエットは似ていると言えるかもしれません。しかし、その制限の度合いにおいてかなり異なります。

ケトン体ダイエットでは、1日に摂取してもよい糖質の量が厳密に定められており、主食や芋類などを避けたりするだけではなく、調味料にまで細かく注意を払わなければ、定められた量を守るのは困難です。長期間、適度な量を減らしていこうという糖質制限ダイエットに比べると、制限が厳しく、実行のハードルが高いと言えます。

かなり極端な制限を行うため、ケトン体ダイエットは専門家の間でも賛否両論があります。健康状態に不安がある人が試してみたいという場合は、必ずかかりつけの医師や専門家に相談してから行いましょう。

また、1日の糖質摂取量を130g以下に抑えるという、ケトン体ダイエットに比べてかなりゆるい糖質制限でも、ダイエット効果は得られるという実験結果もあります。日本人の食事摂取基準では、1日に必要な推定糖質量は100gですので、こうしたゆるい糖質制限であれば、身体に問題となるレベルまでケトン体が増えるようなことは起こりません。

自分の体調や体型を考え、無理のない範囲でダイエットを行うことが大切です。

ケトン体とは

ケトン体(ケトンたい、: Ketokörper: Corps cétoniques: Ketone bodies)とは、アセト酢酸3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸)、アセトンの総称。脂肪酸ならびにアミノ酸の不完全代謝産物である。

一般に、解糖系β酸化で生産されたアセチルCoAは速やかにクエン酸回路により消費される。しかし、肝臓において過剰のアセチルCoAが産生されると、肝臓のミトコンドリア中でアセチルCoAは3-ヒドロキシ酪酸あるいはアセト酢酸に変換される。3-ヒドロキシ酪酸は酵素的にアセト酢酸に変換され、βケト酸であるアセト酢酸は不安定な物質で容易に非酵素的に脱炭酸してアセトンへと変化する。

このようなケトン体が過剰な状態ではケトン血症やケトン尿症を引き起し、呼気中にアセトンが発せられ、尿中にケトン体が含まれるようになる。このような病状をケトーシスと呼ぶ。単動物ではケトン体は肝臓でのみ合成される。一方、反芻動物では消化器中の微生物の発酵による酪酸の過剰生成に伴って消化器でケトン体が生成される場合がある[1]

一般にケトーシスはグルコース代謝に異状をきたし、代償的にケトン体でエネルギー代謝を賄おうとして引き起こされる。例えば、重度の糖尿病患者では、β酸化の過度の亢進などにより肝臓からこれらのケトン体が大量に産生される。インスリングルコースの利用を促進するホルモンであるが、1型糖尿病患者ではインスリンが欠乏している。細胞内にグルコースを取り込む役割をするグルコーストランスポーターのGLUT4は、主に脂肪細胞骨格筋心筋に認められ、インスリンがないときには細胞内に沈んでいるが、インスリンを感知すると細胞膜上へと浮上してグルコースを細胞内に取り込む。

このためインスリンが枯渇していると肝臓筋肉といった組織がグルコーストランスポーターを介して血糖を細胞内に取り込むことが出来ず、体内に蓄積した脂肪酸β酸化することによりアセチルCoAを取り出し、TCAサイクルを回すことでエネルギーを調達する。このケトンによってアシドーシス血液酸性に傾く状態)となる。

このようなケトンによるアシドーシスは特にケトアシドーシスと呼ばれ、特に糖尿病によって引き起こされた場合を糖尿病性ケトアシドーシスという[2]。グルコースが枯渇しているような絶食時、激しい運動時、高脂肪食においてもケトン体が生成される[3]

脂肪酸脳関門を通れないため、は通常、脳関門を通過できるグルコースをエネルギー源としている。絶食等によりグルコースが枯渇した場合、アセチルCoAから生成されたケトン体(アセト酢酸)もグルコースと同様に脳関門を通過でき、脳関門通過後に再度アセチルCoAに戻されて脳細胞ミトコンドリアTCAサイクルでエネルギーとして利用される。

なお、ケトン体のうちアセトンは最終代謝物なのでエネルギーに変換できない。ケトン体は骨格筋、心臓腎臓などでもエネルギー源となるが、肝臓のミトコンドリアのクエン酸回路では酸化分解されずエネルギー源として利用されない。これは肝臓では酢酸からアセチルCoAの合成酵素のmRNAが全く発現していないためである[4][3]。脳はグルコースを優先的にエネルギー源として利用するが、グルコースが少ない時にはケトン体が主たるエネルギー源となる[5][6]

ケトン食の実践法

◇ ケトン食の実践法

中鎖脂肪ケトン食を実践する際に必要な知識や注意点を解説しています

【がん治療に対する中鎖脂肪ケトン食の基本】  

中鎖脂肪ケトン食の基本は、主食の糖質を極力減らすことです。
糖質の1日摂取量は40g以下を目標にします1回の食事につき糖質が20gを超えないようにします
ご飯・パン・麺類・芋類は糖質が豊富なので摂らないようにします。果糖の多い甘い果物も避けます。果糖も体内でブドウ糖に変換されるからです。糖質を食べるにしても、玄米や全粒粉小麦など精製度の低い炭水化物を少量食べます。
ご飯1杯(約150g)には約50gの糖質が含まれます。コンビニのおにぎり1個で糖質は約30g、食パン1枚で糖質は約20gが含まれます。基本的にご飯やパンや麺類は食べないようにします。

蛋白質は体重1kg当たり1〜2gを摂取します。体重60kgで60g〜120gです。
タンパク源としてはがんを促進する赤身の肉(牛肉など)は控え、大豆製食品(豆腐や納豆)や魚や卵や鶏肉などを利用します。豆の中では大豆は糖質含量が少ないので、豆腐や納豆や湯葉など大豆製品は有用です。ただし、豆腐で100g当たり1〜2g程度、納豆は100g当たり10g程度の糖質を含みますので、それを計算に入れておきます。
肉や魚は生の100gで10〜20g程度の蛋白質を含みます。

食品中の栄養素の含有量は文部科学省がインターネットで提供している「食品成分データベース(http://fooddb.jp/)」を参考にします。このサイトで、個々の食品がどの程度の糖質を含むかを日頃から確認しておくと食事の参考になります。
野菜や果物にも種類によってかなり糖質が含まれているので、注意が必要です

加工した食品には栄養表示があるので、炭水化物や脂肪や蛋白質がどの程度含まれているか確認しておきます。
主食を一切省いても、大豆や野菜などにも糖質はある程度含まれています。食品の栄養表示をみながら、糖質の摂取を極力減らし、1日の糖質の摂取量が40グラムを超えないように注意します。
総合ビタミン剤などのサプリメントでも糖を入っていないものを選びます。
ブドウ糖が十分に供給されていると、脂肪酸の分解でアセチルCoAが増えてもTCA回路で代謝されるので、ケトン体は増えません。

肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸を利用すると、脂肪の割合を60%程度に減らし、糖質を1日40〜60g程度摂取してもケトン体を大量に産生することができます。
中鎖脂肪を多く摂取して、脂肪:糖質+蛋白質の比率を1.5:1、つまり食事の60%を脂肪にするという食事を目標にします。糖質を40g、蛋白質を80g摂取するとカロリーは480キロカロリーになります。糖質+蛋白質の120gの1.5倍の脂肪は180gで、これは1620キロカロリーになります。全てを合わせて2100キロカロリーになります。カロリーは制限する必要はありませんが、過剰に摂取することは意味がありません。必要最小限のカロリー摂取を目標にします。
(摂取カロリー比率で計算すると脂肪からの摂取カロリーは70〜80%になります)

中鎖脂肪はココナッツオイルや精製した中鎖脂肪(マクトンオイルやMCTオイル)を1日60〜90gを目標に摂取します。キッセイ薬品のマクトンオイル(MCT85%)や日清オイリオ社のMCTオイルは無味無臭で、いろんな食品に添加して利用できます。調理にはオリーブオイルを用い、ドレッシングにはグレープシードオイルや亜麻仁油や紫蘇油を多めに使います。
亜麻仁油と紫蘇油はがん予防効果があるω3不飽和脂肪酸α-リノレン酸を多く含みます。魚の油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)エイコサペンタエン酸(EPA)もω3不飽和脂肪酸(DHAやEPA)で、がん細胞の増殖を抑える効果があります。魚を食べる場合は、焼き魚は脂肪が減るので、刺身や煮付けや唐揚げがケトン食では適しています。

食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富で糖質の少ないキノコやモズクなどの海藻やおからを食材に使用することも有用です。炭水化物には食物繊維と糖質が含まれますが、食物繊維はいくら食べても問題ありません。食物繊維は腸内環境を良くし便秘を防ぎます。脂肪をグリセロールと脂肪酸に分解する消化酵素のリパーゼの製剤を脂肪の多い食事の後に服用すると、さらに脂肪酸の代謝を促進します。膵消化酵素補充剤のリパクレオンを推奨しています。

野菜には抗酸化作用や免疫増強作用やがん細胞の増殖や血管新生を阻害する成分が多く見つかっています。このような抗がん作用をもつ成分を多く含む野菜をジュースなどにして多く摂取すると抗がん作用を高めることができます。ただし、糖質が多い野菜は摂取量を制限する必要があります。
例えば、がん予防効果が知られているニンジン、ブロッコリー、パセリ、タマネギなども100グラム当たり6グラム以上の糖質を含んでいます。レモンやグレープフルーツでも100グラム当たり8〜10グラムの糖質を含みます。リンゴやブドウや梨は100グラム当たり10グラム以上の糖質を含み、バナナは100グラム当たり20グラム以上の糖質を含みます。
がんに野菜や果物が良いという考えが普及していますが、糖質の多いものは避けることが大切です。

お茶やコーヒーには糖質は含まれていませんが、野菜や果物のジュースにはかなり糖質が含まれているものもありますので、市販の製品の場合は食品表示を確認し、自分で作る場合は食品成分データベースで糖質含量を確認しておくことが大切です。
ビタミンやミネラルの不足する心配があるときは、マルチビタミン・ミネラルのサプリメントの摂取が有用ですが、私はビール酵母のエビオス錠を推奨しています。安価で糖質が極めて少なく(1日量で0.1g以下)、胃腸の保護にも役立ちます。

ケトン食を始めてしばらくは代謝が変わるので、空腹感やパワーがでない感じが起こりますが、1週間もすれば慣れてきて、運動も普通にできます。脂肪が燃焼しやすい体になるからです。最初は糖質を40グラム程度を目標にしますが、体が慣れてくると、糖質を20グラム程度まで減らすとさらにケトン体を多く出すことができます。
尿中のケトン体をケトスティックスで時々測定して、尿中ケトン体が出ていることを確認しておきます。中鎖脂肪の多い食事をすると2〜3時間後に尿を測定するとケトン体が出ているのが確認できます。

中鎖脂肪酸はカルニチンがなくても肝細胞のミトコンドリアに取り込まれますが、長鎖脂肪酸はカルニチンが必要です。サプリメントでカルニチンを摂取することも有用です。
アルコールは糖質の少ないウイスキーや焼酎や糖質フリーの発泡酒などであれば、糖質制限の観点では問題ありませんが、アルコール自体ががん細胞の増殖を刺激しますので、がん患者さんは、アルコールの摂取はできるだけ控えるべきです。

以上のような体内のケトン体産生をわざと増やすような食事療法を行うと、最初の1週間くらいは、脂肪が多いと食後に腹痛がきたり、下痢になったり、倦怠感が出てきます。食物繊維が少ないと食物残査が少ないので便秘になります。しかし、食物繊維を多く摂取し消化酵素を利用すると、不快な胃腸症状はほとんど経験しなくなります。ケトン食に慣れてくるのに1〜2週間くらいかかりますが、体が脂肪が燃焼する状況になれば後は楽です。糖質を10グラムくらいに減らしても、脂肪を150〜200グラムくらいで普通に生活できます。少しづつ糖質を減らしていく方がやりやすいと思います。

注:上記の方法は、進行がんの治療を目的とした厳密な中鎖脂肪ケトン食です。しかし、脂肪の摂取量が多いので、人によっては、脂肪摂取を増やすと下痢や腹痛が起きて、実施が困難な場合も多く経験します。このような場合、糖質制限を緩め、脂肪摂取量を減らす「マイルドなケトン食」でもある程度の効果は期待できます。
摂取脂肪量に占める中鎖脂肪酸の摂取割合を増やせば、糖質を1日に100グラム(カロリーとして400カロリー)程度を摂取しても、ケトン体を多く出せます。このとき、中鎖脂肪の1回の摂取量を少なくして回数を増やしたり、料理に混ぜて摂取すると胃腸への負担は少なくできます。
抗がん剤治療の効果増強や再発予防の目的では、「マイルドなケトン食」でも、十分に効果が期待できます。

さらに具体的は方法は以下を参照して下さい。

1。摂取カロリーの決め方
2。糖質は可能な限り減らす
3。がん細胞の増殖を抑える脂肪を多く摂取する
4。中鎖脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を多く摂取する
5。大豆と糖質の少ない野菜・果物を多く摂取する
6。蛋白質は回復力と治癒力の源
7。人工甘味料について
8。サプリメント
9。日本料理と地中海料理
10。中鎖脂肪ケトン食の副作用

「糖尿病に勝ちたければ、インスリンに頼るのをやめなさい」〜書籍出版記念イベント〜宗田哲男医師の発表

https://youtu.be/LlkYfVzzEpE?list=PLbYMOI1fVZyw6Zwy9k-_QipT_PMTTRA_U

 

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