ドクター江部の糖尿病徒然日記 難消化デキストリン

おはようございます。

デキストリンとか難消化デキストリンとか、食品のラベルでよく目にします。いったいどんななものなのでしょうか。

今回はすぅ さんから難消化デキストリンについて、コメント・質問をいただきました。

『08/08/04 すぅ
はじめまして、こんにちわ。
先月、母がケトアシドーシスの診断を受けインスリン注射の治療になり、いろいろ調べていたら先生のブログに辿り着き以来たくさん勉強させてもらっています。
残念ながら母にはまだ糖質制限食は理解してもらえず(病院でしっかりカロリー計算の教育を受けて頭から離れないので・・・。)ぶつかることもあるのですが、今まで油が敵だったのが食べてもいいと言われても病気の体で不安があるのは当然なので少しずつ理解してもらえるように一緒にがんばっていきたいと思います。
そこで今日は難消化性デキストリンについてお聞きしたいと思います。以前のブログに糖の吸収を穏やかにすると言った健康食品に大きな効果を期待してはいけないとの事だったのでその点は気にしてないのですが、デキストリンはでんぷんなんですか?糖質制限食にはでんぷんは控えなければならない成分ですが、デキストリンは摂取しても害はないんですか? お菓子づくりの安全な素材を探していてみつけました。お忙しいのにこんな質問ですみません。』

すぅさん。コメントありがとうございます。

ご質問の難消化デキストリンは、摂取しても吸収されませんので、血糖値も上昇せず、糖質制限食OK食品です。

デキストリンは、いもやとうもろこしなどのデンプンを化学的、あるいは酵素的な方法により低分子化したものの総称です。通常は、デンプンより低分子であることから消化されやすく、吸収されやすいと考えられています。

一方、デキストリンを加熱処理し、酵素(α-アミラーゼまたはグルコアミラーゼ)で分解して難消化性部分を分離精製したものは、難消化デキストリンと呼ばれ、小腸では分解されない難消化性の食物繊維として使われます。これが、難消化デキストリンと呼ばれるものです。

ヒトでの有効性については、「おなかの調子を整える」、「血糖値が気になり始めた方の食品」として、難消化性デキストリンを関与成分とした特定保健用食品が許可されています。

ヤクルトの「健茶王」、伊藤園の「緑茶習慣」、亀田製菓の「からだサポートごはん」などの特定保健用食品に使用されています。

結論です。

通常のデキストリンは消化吸収されて血糖値を上昇させますが、難消化デキストリンは消化吸収されない食物繊維の扱いなので、お菓子づくりの安全な素材としても利用できますよ。 (^_^)

江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット

コメント

先生、初めまして糖尿おじさんと申します。昨日もトラックバックさせていただき、ご挨拶にお伺いいたしました。

2か月前に糖質制限というものを知り、実践してまいりました。今のところかなりの効果が出ております。HbA1cは糖質制限を始める前は6.7%→7/15には5.8%となり、江部先生には本当に感謝しております。

新しいことにトライしていく勇気がある医療関係者の江部先生に感謝感激です。

8/4にトラックバックさせていただいた私の記事は内容変更が必要なために現在公開しておりません。先生のブログを汚しているよな行為をお許し下さい。(もちろん削除いただいて構いません)

2008/08/15(Fri) 08:56 | URL | 糖尿おじさん | 【編集

糖尿病おじさん様

糖質制限食実践でHbA1c1.1%改善。
良かったですね。
これからも
美味しく楽しく糖質制限食続けてくださいね。(^_^)

2008/08/15(Fri) 16:28 | URL | 江部康二 | 【編集
ありがとうございます

本日は私の母の見舞いに行ったときに江部先生にお会いできて嬉しかったです。

ブログは書き手の性格そのものともいいますが、ブログから感じる先生の人柄そのものでした。

家族揃ってお世話になると思いますがよろしくお願いします。

今日は焼酎にしておきました。(^_^;)

2008/08/15(Fri) 18:50 | URL | boss | 【編集

boss さん。

昨夜はターニングポイントの第三金曜ライブ、
ご母堂が、つばさの会のご友人と一緒に来て下さいました。
楽しんでいただけたかなと思います。 (^_^)

2008/08/16(Sat) 07:51 | URL | 江部康二 | 【編集

J-bread さん。

機能性低血糖症と糖質制限食に造詣の深いお医者さんと栄養士さんが東京におられます。
京都までは大変ですので
ひめのともみクリニックに
相談されてみてはいかがでしょうか?
電話で予約できると思います。

ひめのともみクリニック
〒141-0022 品川区東五反田1-17-1 第二昭和ビル3階
℡03-3445-0766 Fax03-3445-0838
ホームページ:http://himeno-clinic.com/

2008/08/16(Sat) 19:33 | URL | 江部康二 | 【編集
先生初めまして 糖尿病患者になってまだ10日目の初心者です 特定検診で発見され その時にはすでに血糖値(空腹時)205 HbA1c9.2と言う結果で 病院の先生からもこんな数値今まで見たことがないと言われる始末で…だからといって栄養指導も受けましたが 今一要領が分かりません この数値はかなりの重症なのでしょうか 食事も何が良くて何が悪いのかさっぱり分からないです 食事のポイントは何ですか?何も分からないまま 今までの食事の分量を半分に減らして 運動もウォーキングもほぼ毎日30分しています
2008/08/16(Sat) 21:00 | URL | こころ | 【編集
先生初めまして 糖尿病患者になってまだ10日目の初心者です 特定検診で発見されその時にはすでに血糖値(空腹時)205 HbA1c9.2と言う結果で 病院の先生からもこんな数値今まで見たことがないと言われる始末で…だからといって栄養指導も受けましたが 今一要領が分かりませんこの数値はかなりの重症なのでしょうか 食事も何が良くて何が悪いのかさっぱり分からないです 食事のポイントは何ですか?何も分からないまま 今までの食事の分量を半分に減らして 運動もウォーキングもほぼ毎日30分しています
2008/08/16(Sat) 21:00 | URL | こころ | 【編集
マルトデキストリン
先生初めまして hinapapaと申します。
先日健康診断で糖尿病と判明しました。空腹時血糖280mHbA1 12%
お医者さんには「こんなヒドい状態見たことない」と言われため息をつかれて、しかも何も食事療法の仕方など全く教えてくれず3種類の飲み薬を出されただけでした。
母親が糖尿病で多少の糖尿病の知識があって恐ろしさを知ってただけにショックでまだ32才で子供産まれたばかりであの糖尿病食と運動を一生続けくのかと目の前が真っ暗になりました。しかし先生のブログに出会い本は全て買いました
スーパー糖質制限を始めて5日で薬を止めても、空腹時血糖90食後も140未満です。本当に神様に出会ったような気分です。有り難うございます。
ヽ(≧▽≦)/
感謝の気持ちをどうしても伝えたくて長くなってすみません本題の先生への質問なのですが、僕は糖尿と無理なダイエットで痩せて筋肉まで落ちてしまったんですが、筋トレしてるのですがプロテインの成分でマルトデキストリンという成分があるのですが、メーカーに問い合わせたところ血糖値を上昇させない場合と答えが返ってきました。
デキストリンとマルトデキストリンは違うのでしょうか?マルトデキストリンとは難消化デキストリンと違うとも言われました。お忙しいなかすみません時間がありましたらお願いします。先生頑張って下さい。
先生のおかげで人生に光が見えました。

 

ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか (光文社新書)

ケトン食ががんを消す (光文社新書)

なぜ高カリウム血症になると不整脈がおこるんですか

まず心臓は規則的な電気の流れで上手く動いています。

心臓の細胞は規則的に電気を通すために、ナトリウムやカリウム、カルシウムなどが規則的に出入りしています。

高カリウムになると、そのイオンバランスが崩れ、電気の流れが乱れ、不整脈となります。

もちろん、低カリウムのほか、ナトリウムやカルシウム濃度の高低でも不整脈が起きますよ。

【第130号 】腎不全患者に合併する高カリウム血症について

【第130号 】腎不全患者に合併する高カリウム血症について

・腎臓疾患と食事について  ・高カリウム血症の薬について

 【腎不全患者に合併する高カリウム血症について】

 体を構成している「ミネラル」のカリウム(K)やナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)はそれ自体が一つの元素で、(核反応を起こさないかぎり)加熱しても無くなりません。(しかしお湯にさらして煮汁にゆでこぼすことはできます。)カルシウムとカリウムはまぎらわしく、混同される方がおられますが、この二つは全く別の元素です。

 一般に、健康(高血圧の予防)のためにはNa(塩分)は控えめ、K(カリウム)は沢山とるのが良く、Kが多い生野菜やくだものの摂取が勧められています。バナナはKを多く含み「バナナ健康法」が流行りましたよね。「腎臓」にとってもKは良い作用をしますので、Kの多い「すいか」は腎臓に良いと昔から言われてきました。そのほか、ポカリスエットや、トマトジュース、野菜ジュースなど健康に良いと思われる飲み物にはKが相当含まれています。病院の薬の「腎臓を保護する薬」にも、Kを上昇させる作用があります。腎機能が正常な方は、Kを摂りすぎたとしても余分なKは尿から排出されるため高くなりすぎることはありません。

ところが!

腎臓の働きが3分の1以下に低下して「腎不全」になりますと、Kが尿から出にくくなり、体に溜まってKが高すぎる状態(=高K血症)になりやすくなります。高K血症は心臓に対する猛毒として作用し、不整脈や心臓まひを起こし急死の原因となります。それゆえ腎臓の働きが悪い方(血液検査でeGFRが60以下、特に30以下の方)は、本来ならば健康に良いはずのKの摂取を控えなければなりません。私は「腎臓に良いから」とスイカをわざわざ沢山たべて急死された患者さんを何人も見てきました。

他によくある誤解は、「野菜や果物のほうが肉や魚より良いと思った」「なまが悪い、と聞いたので、『干し柿』を食べた。」「野菜を電子レンジでチンしたのでKは減っていると思った」「のりやこんぶは野菜じゃないから良いと思った」「缶詰のくだものが腎臓食の給食についてきていたから、わざわざ缶詰のくだものを買ってきて食べている」「コーヒーや抹茶は野菜じゃないからよい」「みかんはダメと言われたのでネーブルを買って食べた」「みかんやりんごはバナナよりはKが低いと聞いたのでダンボール一箱もらったみかんを食べた」「知人のすすめで健康食品(青汁など)を摂っている」「さしみを沢山たべた」などなど。
これらは皆間違った考え方で運悪ければ急死することになりかねません。高K血症にくれぐれも御用心ください。

 最後に繰り返しますが、カリウムを取りすぎて有害なのは腎臓の働きの悪い方に限られます。腎機能が良い方は、健康のためどんどんカリウムを摂取いただいて結構です。「腎臓が良いか悪いかわからない」方は一度腎臓内科を受診してみて下さい。

(腎臓内科医長 富田 正郎)



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 【高カリウム血症の薬について】

 腎不全における高カリウム血症の治療は、まずカリウムの摂取量を減らし、原因となる薬を中止します。それでも不十分な場合はカリウムを吸着し、便や尿とともに体の中に出す働きのあるお薬を使用します。また、緊急に治療が必要な場合は、グルコン酸カルシウム(カルチコール®)で不整脈を予防したり、重曹(メイロン®)を投与して酸性に傾いた血液を中和したり、血液透析を行います。今回は、カリウム吸着剤の2種類について説明します。

ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート®、アーガメイト®

ポリスチレンスルホン酸カルシウムは、腸内のカリウムイオンと本剤のカルシウムイオンを交換し、カリウムを体外に排泄させることにより、血中のカリウム値を低下させます。この薬は便秘を起こしやすいので、便秘を予防する目的でソルビトール溶液(糖類の一種)と一緒に飲むことがあります。アーガメイト®はゼリー剤のため、水分制限のある人やカリメート®が服用できない人に利用されます。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、腸管内でカリウムイオンとナトリウムイオンを交換することで高カリウム血症を改善します。カリウム吸着剤は便秘を起こしますが、ケイキサレート®はナトリウムを放出し、浸透圧により便に水分を含ませるため、便秘を起こしにくいと言われています。

どちらのお薬も定期的に検査を受け、効果や副作用をチェックしましょう。
お薬を使用するうえで、不明な点や気になることがある場合は、医師・薬剤師にご相談ください。

(薬剤師 田代 早紀)



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 【腎臓疾患と食事について】

 前述で富田医師が説明されたように、腎機能の悪い方ではカリウム(K)の摂取制限を行います。また、たんぱく質制限や塩分制限も腎臓病食事療法の主体となるものですが、今回は『食事からのK制限』を中心に説明します。

K制限と言われても、何を食べたらいけないの?どれだけ控えるの?と疑問に思うことはたくさんあると思います。腎機能の正常な方では1日2000〜2500mgのK摂取を目安量として定められており、2006年の全国調査では1日平均男性2384mg、女性2215mg摂取しているといわれています。腎機能の低下した方では1日1000〜1500mg以下(普通食の約1/2以下)に控える必要があります。まず気をつけることは、肉・魚・乳製品などを食べ過ぎないということです。これらはたんぱく質が多い食品ですがKも合わせて多いのが特徴です。次に生野菜や果物摂取に注意することです。生野菜は茹でこぼし法や水さらし法を実施すること、果物は基本的に摂取を控えることをお勧めします。

食品中のK含有量をいくつか紹介します。

(1)バナナ1本 360mg
(2)みかん1個 120mg
(3)じゃが芋1個 410mg
(4)野菜ジュース(1本200ml) 310mg
(5)スポーツ飲料(500ml) 100mg
(6)鶏肉(100g) 300mg。

同じような食品でも大きさや種類によってKの量は違いますが、以上の事を参考に日々の食事療法に取り組まれてはいかがでしょうか。

栄養に関するご相談等がありましたら、栄養管理室までいつでもご連絡ください。

(管理栄養士 近藤 高弘

拷問のような痛みが何か月も続く

千葉県に住む歯科医師の菊池俊矢さん(仮名、45歳)は、9年前、神経障害で1年間苦しんだ経験をもつ。仕事に追われ、糖尿病の治療が思うようにできずにいたころ、ついに糖尿病昏睡を起こして入院。そのときに神経障害が出始めたのだ。当時、血糖値は450~500だった。
「最初は足の裏が分厚くなった感じで、感覚がなくなり、何だろうと思っているうち、その異常な感じが両足に広がって、足首、すね、膝、ももと、上にあがってきた。そして、膝を超えたあたりで、今度は強烈な痛みに変わったんです」。痛みを感じてから約2か月後のことだ。
痛みはとくに足首から下がひどく、ちょっと触れられただけでも飛び上がるくらい痛かった。安静にしても夜になっても、少しもよくならない。「眠るどころじゃない。もう拷問ですよ」。痛み止めを飲んで、それが効くころようやく眠って、朝、目が覚めると、また痛みと格闘する日々が始まった。
主治医の「回復には早くても2、3か月。とにかく血糖コントロールをよくして、それを継続すれば必ず治る」という言葉を支えに、ひたすら食事療法、インスリン療法に専念。とくに運動療法は、毎日20分の歩行がノルマ。痛みどめで感覚が麻痺した足を踏みしめ、がんばる。だが、努力もむなしく、痛みのゾーンは膝から20cm上まで進行してきた。


コントロールの改善が最高の特効薬

「痛み出して4か月に入ったころは、いつになったらよくなるのか、さすがに不安になりました。激痛は相変わらずで、仕事に復帰するめどもたたず、このころが一番苦しかった」。
そんなある日、新しい痛みに気づく。膝上の痛みで、しかも、みみずがはうように移動する。主治医に報告すると。「それが、神経が回復してきた証拠ですよ」という返事が返ってきたのだ。
事実、それを機に、徐々にではあるが痛みが減り始め、まず膝上部分が、次にすねの上半分の痛みがとれた。後戻りする方向で痛みのゾーンが下がりだした。約6か月かかって、全部の痛みがようやくとれた。
「痛みがとくに強かった4か月間は、本当に長かった。でも、なんとかがまんできたのは、主治医の先生の的確なアドバイスがあったからです。病状に応じて、うるさがらずにきちっと説明してくれたので、納得できたし、回復を信じることができた。
今は月2回のゴルフもできるし、自転車にも乗れる。なんでもできるということが、とてもうれしい。近所の人だって、私が糖尿病だなんて知らないんですから(笑)」。  現在の菊池さんのHbA1cは6.7%。このコントロールが神経障害を克服したのだ。

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値

第59回日本糖尿病学会年次学術集会

 日本糖尿病学会と日本老年医学会は、高齢の糖尿病患者を対象とした血糖コントロールの目標値をつくったと発表した。高齢者や年齢や健康状態、治療内容などで区切り、それぞれが無理なく効果的に糖尿病の治療を行えるよう工夫されている。
個々の患者に合わせて安全・効果的に
血糖をコントロール

日本糖尿病学会と日本老年医学会は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値」(HbA1c値)を発表した。

今回発表した目標値は、2013年に日本糖尿病学会が発表した「血糖コントロール目標」(熊本宣言2013)をさらに深化させ、65歳以上の高齢者について、よりきめ細かく目標を設定したことが特徴となる。  高齢者を年齢や健康状態、治療内容などで区切り、個々の患者に合わせて安全かつ効果的に糖尿病の治療を行えるよう工夫されている。  糖尿病の高齢者は増加しており、国内の糖尿病有病者数は約950万人のうち約3分の2は65歳以上とみられている。一方で、高齢者には心身機能の個人差が大きいなど特有の問題があり、血糖コントロールを困難にしている。さらに、高齢の糖尿病患者では「重症低血糖」が起こりやすく、低血糖は認知機能を障害し心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高める。  目標では、日常生活動作(ADL)レベル、認知機能、薬物療法の内容などによって7.0%未満~8.5%未満のきめ細かなHbA1c目標値を策定。重症低血糖のおそれのある薬剤を服用している患者では「下限値」も設定された。  「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」基本的な考え方は、以下の通り。

(1) 血糖コントロール目標は患者の特徴や健康状態:年齢、認知機能、身体機能(基本的ADLや手段的ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して個別に設定すること。
(2) 重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行うこと。
(3) 高齢者ではこれらの目標値や目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、表に示す目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としたこと。
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)

治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。ただし、加齢に伴って重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する。

低血糖が高齢者の血糖コントロールの障害になっている

高齢者糖尿病の治療に大きな影響をおよぼす要因のひとつは低血糖だ。高齢者では肝・腎機能の低下によって薬物の代謝が遅延しているだけでなく、低血糖の自覚症状が軽微で、合併する神経障害をはじめとする種々の疾病の影響でさらに症状が出にくくなっている場合がある。  高齢者の低血糖で重症合併症を併発しやすい要因としては、長期罹病、重症低血糖の既往、動脈硬化の進展、血糖コントロールの不良、自律神経障害の合併などが知られており、高齢者では1回の低血糖でも極力避けるべきだという。  特に経口血糖降下薬のなかでも強い血糖降下作用をもつ「インスリン製剤」「SU薬」「グリニド薬」を使用する際には十分な配慮が必要となり、単独使用では低血糖の少ないDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬でも、SU薬と併用する場合は注意を要する。  高齢者糖尿病の健康寿命を維持するためにはどのような治療が必要なのかをあきらかにする目的で、「高齢者糖尿病に対する前向き大規模臨床介入研究(J-EDIT研究)」が行われた。65~85歳の血糖コントロール不良の高齢者を、治療目標値に向けた治療を行う強化治療群と、通常治療群の2群に分け、追跡調査を行った。  その結果、高齢の糖尿病患者では血糖コントロールが不良のまま経過する例が多く、高血糖は脳卒中などの糖尿病合併症の危険因子となる一方で、HbA1c7.0%の良好な血糖コトンロールを維持している高齢者でも合併症のリスクが上昇するという「Jカーブ現象」がみられた。  今回発表された目標では、低血糖を回避するため、個々の患者に合わせて上限値を7.0~8.5%まで緩和するとともに、下限値を6.5~7.5%に設定したのが大きな特徴だ。  管理目標値の設定に、患者の特徴・健康状態や、薬物療法の内容を加味したのは、欧米のコントロール指針にはない日本の独自の試みだという。

高齢者の認知症や介護の予防も重視している

新しいコントロール目標では、患者の「日常生活活動度」(ADL)や認知症の程度に合わせて、血糖コントロールの目標値をゆるめる工夫もされている。  ADLは、人が生活をおくるために行う活動の能力を示したもの。「手段的ADL」とは、日常生活を送る上で必要な動作のうち、例えば、買い物や洗濯、掃除などの家事全般や、金銭管理や服薬管理、外出して乗り物に乗ることなど、社会生活を行う上で必要となる複雑で高次な動作が障害されるADL。  一方、「基本的ADL」とは移動、階段昇降、入浴、トイレの使用、食事、着衣、排泄などの、身の回りのことをするために最低限必要で、生きていくうえで基本となる能力を示す。  日本老年医学会によると、高齢の糖尿病患者は「手段的ADL」が1.65倍、「基本的ADL」が1.82倍低下しやすいという。  この目標を活用するためには、ADLや認知機能を簡便に評価する必要があるが、両学会では公式サイトで日常診療に有用な情報を掲出していく予定だという。 日本糖尿病学会
日本老年医学会 第59回日本糖尿病学会年次学術集会

[ Terahata ]

糖尿病性神経障害 | e治験.com

糖尿病における神経障害(糖尿病性神経障害)とは

糖尿病における神経障害(糖尿病性神経障害)とは

糖尿病性神経障害とは、網膜症、腎症とならんで、高血糖の状態が長く続くことによっておこる糖尿病の3大合併症の一つです。(糖尿病について詳しく知りたい方はこちらへ
高血糖によって身体のすみずみに広がる「末梢神経」の働きが低下していきます。末梢神経には、痛みなどを感じる「知覚神経」、筋肉を動かす「運動神経」、 内臓の働きを整えたり体温を調節したりする「自律神経」の3つがあります。この3つの神経の働きが低下してくるために全身に様々な症状が現れてきます。
3大合併症の中で、神経障害だけは手足のしびれなどの自覚症状が初期の頃から現れてきます。症状が軽いからといって放置していると悪化の一途をたどって しまいますが、重症でない限りはしっかりとした血糖コントロールを続ければ、症状を改善することが可能な合併症です。
糖尿病性神経障害を含む、糖尿病における合併症は以下のように分類することができます。

糖尿病の合併症

分類 合併症 特徴
急性合併症 糖尿病性昏睡(こんすい) 糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡 1型糖尿病が発症した時やインスリン治療を中断した時にインスリンが不足することによって、血液が酸性(ケトアシドーシス)になり、のどが渇き水分を多量に飲み、尿の量が多くなります。脱水症状がみられ、さらに進行すると、血圧が下がるとともに意識障害がでて、最終的には昏睡にいたります。
1型糖尿病の患者に起こりやすいです。
高浸透圧性非ケトン性昏睡 2型糖尿病患者が感染症や脳血管障害、あるいは外科手術などをきっかけに、血糖の上昇と水分の補給不足を起こし脱水状態となります。さらに進行すると、意識障害も起こります。
高齢の2型糖尿病の患者に起こりやすいです。
低血糖 血糖値が低くなりすぎた状態で、糖尿病の治療薬の副作用として起こります。発汗、いらいら感などがみられ、さらにひどくなると腹痛や吐き気、けいれんや意識を失うこともあります。
慢性合併症 糖尿病性神経障害 身体のすみずみまで伸びている末梢神経が障害されるため、手足のしびれや痛み、感覚が鈍くなる、下痢や便秘、顔面神経麻痺など全身に様々な症状がでてきます。
糖尿病性網膜症 網膜の細い血管に障害が起こり、視力が低下していきます。最悪の場合は失明することもあります。
糖尿病性腎症 腎臓の機能が障害されるため、尿中に蛋白が混じってきます。さらに腎機能が悪化して腎不全になると、人工透析が必要になります。
動脈硬化 血糖が高い状態にしておくと、血管が硬くなるとともに、詰まりやすい状態(動脈硬化)になるため、脳卒中や心筋梗塞を起こしやすくなります。糖尿病における最大の死亡原因は、この脳卒中や心筋梗塞です。

糖尿病性神経障害の症状は

糖尿病性神経障害の症状は

血糖の高い状態が続いていると、まず手や足先の神経から障害が起こります。症状としては、手足のしびれや痛み、足先の異常な冷え、足底部が皮をかぶった感じ、砂利の上を歩いているような感じといったものがあります。これらの症状は比較的軽いため放置したり、市販薬で治療する患者さんもいますが、この段階で適切な治療を受けないと症状はどんどん悪化して、全身の筋肉が萎縮し、顔面神経麻痺、便秘や排尿障害、立ちくらみ、インポテンツといった症状が起こります。
さらに進行すると、症状はますます重くなり手足のしびれや痛みのために夜眠れない、火傷や靴ずれに気がつかず放置していたために細菌感染を起こし、その 部分の組織が一部死んでしまう状態の壊疽(えそ)にまで発展することもあります。ひどくなれば足を切断することにもなります。
こういった状態にならないために、症状が軽いうちから治療を始めることが必要です。

糖尿病性神経障害の分類

分類 原因 症状
多発性神経障害(知覚・運動神経の障害) 神経細胞内にソルビトールという物質が蓄積されることで、神経障害が起こるとされている しびれ、冷感、神経痛、感覚麻痺、こむらがえりなど
自律神経障害 発汗異常、立ちくらみ、便秘、下痢、胆のう収縮能低下、尿意を感じない、インポテンツなど
単一性神経障害 細い血管が詰まって、神経に血液が通わなくなることで神経障害が起こる 顔面神経、外眼筋、聴神経の麻痺や四肢の神経障害など

神経障害の症状

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糖尿病性神経障害の検査と診断

糖尿病性神経障害の検査と診断

神経障害を調べるための検査

検査項目 特徴
末梢神経伝導速度

末梢神経伝導速度

末梢神経による刺激の伝わる速度を測定する検査です。
神経障害になると、刺激の伝わり方が遅くなります。腕にある正中神経の運動神経伝導速度が50m/秒以下、感覚神経伝導速度が45m/秒以下の場合は、自覚症状がでていなくても神経障害が始まっていると判断できます。

振動覚閾値(しんどうかくいきち) 物が振動していることを感じる神経の働きを調べる検査です。
アキレス腱反射 神経による刺激の伝達能力を確かめる検査です。
神経障害が起こるとアキレス腱反射がなくなります。神経障害を調べる検査で最も簡単にできるものです。
呼吸心拍変動係数

呼吸心拍変動係数

自律神経の働きを調べる検査です。
安静時と深呼吸をした時の心電図を比較して、脈拍に変動があるかを調べます。正常な人は深呼吸をしたときに脈拍の変動が大きくなりますが、自律神経に障害が起きると、この変動が少なくなります。

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糖尿病性神経障害の治療法

糖尿病性神経障害の治療法

糖尿病性神経障害の治療法

糖尿病性神経障害の治療の基本は、血糖コントロールを良好に保つことです。食事療法・運動療法・薬物療法により血糖コントロールを厳格に行わなければ、神経障害に対する薬物治療を行っても、満足のいく効果は期待できません。また、症状が軽い初期の頃は、血糖コントロールを正常化するだけで、神経障害の諸症状を改善できることもあります。
また、神経障害の治療には、神経障害を起こしている原因物質とされるソルビトールの産生を抑えるアルドース還元酵素阻害薬があります。これらの治療を始めると一時的に痛みが悪化することがあります。治療後神経障害といわれるものですが、この詳しい原因はまだわかっていません。治療の途中で一時的に症状が悪化することがあるということを理解し、痛みがひどくなったからといって自己判断で治療を中止することなく、治療を続けるようにしましょう。

糖尿病性神経障害の諸症状改善に使われる代表的な薬

分類 特徴
アルドース還元酵素阻害薬 神経障害を起こすとされている原因物質(ソルビトール)の産生を抑えることで、疼痛やしびれ感などを改善します。
整腸薬 自律神経障害によっておこる下痢や便秘の症状を緩和します。
鎮痛薬 知覚神経障害によっておこる痛みを緩和します。しかし、鎮痛薬を服用しても痛みが緩和されない場合は、抗けいれん薬の投与が行われています。

ソルビトールとアルドース還元酵素

ソルビトールは、リンゴ、ナシなどの果物や海藻類など含まれている糖アルコールと呼ばれる物質で、虫歯になりにくい甘味料としても利用されています。一方、アルドース還元酵素は、体内に存在している酵素で、ふだんはあまり働かない酵素なのですが、血糖値が高くなると、突然働き出し、体内にある余分なブドウ糖に作用して、ソルビトールを作り出します。
ソルビトールは、元来体内にも存在しているので、少ない量では人の健康に害を与えることはありません。高血糖が続き、細胞内に貯まっているブドウ糖を減少させようとアルドース還元酵素が働き始めると、ソルビトールが多量に作り出されるため、細胞内にソルビトールが蓄積され、障害が起こるとされています。
アルドース還元酵素は、末梢神経、網膜、水晶体、脳、肝臓、すい臓、赤血球、副腎などで多く存在することが認められています。つまり、このような細胞(臓器)は糖尿病の合併症が出やすいところであり、アルドース還元酵素の存在するところと一致しています。

アルドース還元酵素阻害薬の作用

アルドース還元酵素阻害薬は、ブドウ糖からソルビトールを作り出すアルドース還元酵素の働きを妨げることによって、細胞内でのソルビトールの生成を抑制します。これによって、細胞内へのソルビトールの蓄積が抑えられ、糖尿病性神経障害における自覚症状や神経機能の異常を改善するとされています。

アルドース還元酵素阻害薬の作用

糖尿病性神経障害と診断されたら

糖尿病性神経障害と診断されたら

  1. 主治医の先生と相談して、症状にあった治療を早めに受けましょう。
  2. 低血糖・高血糖になりやすいので、血糖値をこまめに測定し、良好な状態に保つように心がけましょう。
  3. 毎日、足をまめにチェックして、壊疽(えそ)を起こさないように注意しましょう。
  4. 立ちくらみを防止するために、寝ている姿勢から一気に起き上がらないようにしましょう。また、長風呂は避けるようにしましょう。
  5. アルコールは神経障害を悪化させます。禁酒を心がけましょう。
  6. たばこは血流を悪化させるため、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。禁煙を心がけましょう。

糖尿病教室・糖尿病性神経障害

糖尿病の3大慢性合併症について詳しくお話してきましたが、今回は最後の一つ、糖尿病性神経障害についてお話してみたいと思います。

神経の働き

神経のイメージ図神経は脳から始まり脊髄を通って全身に広がっています。脳は巨大な神経の塊ともいえます。
その働きは「脳からの命令を全身(筋肉)に伝え、体からの情報(触覚、痛覚、温感)を脳へ伝える」です。

私たちは、神経が正しく働いてくれることで初めて、「何かが触れている」とか「痛い」とか「熱い・冷たい」「かゆい」といった情報を感じることが出来ます。
また走ったり寝転んだり、指先の微妙な動きも、脳からの指令を神経が正しく伝えてくれるからできるのです。

他にも「自律神経」といわれるものがあります。自律神経失調症といった言葉で聞かれることもあるかと思います。これは心臓や胃腸など、自分の意志では動かせない筋肉を調節しています。

どうして神経が傷害されるのか?

現在挙げられている原因としては以下のものがあります。

  • 血糖が高くなることで余分な物質(ソルビトール)が神経細胞に溜まるため
  • 血管が障害され血液の流れが悪くなり、神経に栄養がいかなくなるため

他にもいろんな因子が絡み合って神経障害は発症すると言われています。

多彩な症状

糖尿病性神経障害は、網膜症や腎症と違いその症状は様々で個人差が大きくなります。

  • 手足がピリピリしびれる、ジンジンする。
  • 異常に冷たく感じたり、逆に熱を持ってほてった感じがする。
  • 針で刺されるような痛みや灼熱感で夜眠れない。
  • 足の裏が皮を被ったように感じる。
  • アリなどの虫が這っているような感じがする。
  • 痛みを感じなくなる、触ってもわからない。
  • 胃腸の調子が悪くなる。
  • 立ちくらみがする
  • 立ち上がれなくなったり、階段が上れなくなる。
  • 血糖のコントロールが悪くなる。

主なものを挙げただけでもこれだけになります。他にもいろんな症状があるようです。
それはどの神経がおかしくなるかによって症状が違ってくるからです。

感覚を伝える神経がおかしくなると、痛かったりかゆかったり、逆に感覚がなくなったりします。筋肉を動かす神経がおかしくなると、筋肉はだんだんと弱っていって萎縮していきます。

自律神経がおかしくなると心臓や胃腸がうまく働いてくれなくなります。
血圧がうまく調節できない → 立ちくらみ
心臓のリズムが調節できない → 不整脈
胃腸の働きが調節できない → 食べのものがいつまでも胃に残る → 消化に時間がかかる → 血糖の上昇が長時間持続する → 血糖コントロールの悪化

結果、様々な症状が現れることになってきます。

重症化すると危険!

痛みを感じる神経の障害がひどくなると痛みを感じなくなっていきます。するとどうなるでしょう?

  • どこかにぶつけても痛くありません。ですからぶつけたことすら気づかずに、ある日ふと足を見ると大きな潰瘍ができていたりします。
  • ちょっとした火傷でも痛みは感じません。ですからすぐに冷やすこともなく、深い傷になってしまうことがあります。

他にも

無痛性心筋梗塞
心筋梗塞が起こっても痛みやひどいといった症状がなく、手遅れになってしまう。
致死性不整脈
心拍のコントロールが乱れ、長い時間止まってしまったり、ポンプとして働けないくらい早くなったりする。
無自覚性低血糖
低血糖症状が出ないために、昏睡になるまで気づかない。

などの危険な状態が起こりえます。これらはどれも神経が働かなくなって「体に異常が起こっていてもわからない」ために、手遅れになってしまうのです。

これらは重症な場合ですから、早いうちから治療しておけば問題ありません。

糖尿病性神経障害と診断されたら・・・

血糖が高くて余分なもの(ソルビトール)が溜まるのですから、血糖を正常な状態に保てば余分なものは溜まりませんし、溜まったものも少しずつ減っていきます
ですから、やはり血糖のコントロールは大切です。

他にも怪我をしてもわからないのですから、痛みだけに頼らず、ちゃんと自分の目で見て確認することが大事です。毎日お風呂に入るときには全身を良く見て、どこかに怪我や火傷がないか調べるようにしましょう。

血流が悪くて栄養がいかないのも原因の一つです。タバコは特に体の隅々の血流を悪くしますから、神経に栄養を行き渡らせるにはやはり禁煙が必要です。

立ちくらみがひどい人は、急に起き上がらないようにするのも大事です。

糖尿病性神経障害なのか、他の病気なのか?

「痛みを年のせいと思って普通の鎮痛剤を飲んでいたら実は神経障害だった」、とか「痛みがなくなった、よかったと思っていたら実は悪化して痛みを感じなくなっていた」とうこともあります。

症状が同じでも原因が違うことがあります。原因が違えば対応も違います。
自分の判断で決めてしまうと治療が遅れてしまうこともあります。

糖尿病性神経障害かどうかは検査をしなければわかりません
「おかしいな?」と感じることがあれば遠慮しないで医師に相談しましょう!!

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